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東京簡裁平成14年7月9日判決

事件番号  :平成13年(少コ)第1016号,平成13年(ハ)第14386号
事件名   :敷金返還等請求事件,修繕費用請求
裁判年月日 :H14. 7. 9
裁判所名  :東京簡易裁判所

平成14年7月9日判決言渡 東京簡易裁判所 平成13年(少コ)第1016号 敷金返還等請求事件,平成13年(ハ)第14386号 修繕費用請求事件

主       文

1 平成13年(少コ)第1016号事件被告は,同事件原告に対し,金9万3294円を支払え。

2 平成13年(少コ)第1016号事件原告のその余の請求を棄却する。

3 平成13年(ハ)第14386号事件原告の請求を棄却する。

4 訴訟費用は両事件を通じてこれを3分し,その1を平成13年(少コ)第1016号事件原告の負担とし,その余を同事件被告の負担とする。

5 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請 求

1 平成13年(少コ)第1016号事件(以下「第甲号事件」という。)被告は,原告に対し,金25万3774円を支払え。

2 平成13年(ハ)第14386号事件(以下「第乙号事件」という。)被告らは,原告に対し,連帯して,金9万0326円及びこれに対する平成13年11月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 請求原因の要旨

(1) 第甲号事件

第甲号事件原告(以下両事件を通じ,単に「原告」という。)は,@下記の賃貸借契約に基づき同事件被告(以下両事件を通じ,単に「被告」という。)に預入れた敷金14万2000円,A物件明渡後の日割賃料金1万1774円(平成13年3月27日から同月31日までの分),B被告が原告の保証人である実弟(第乙号事件被告A。以下単に「被告A」という。)の職場に執拗に電話をかけたり,正当な理由もなく原告の転居先住所の住民票を取得した不法行為による損害賠償金10万円,以上合計金25万3774円の支払を求めた。


賃貸借契約日  平成11年3月10日
目的物件  東京都文京区某a丁目b番c号所在d号室(以下「本物件」という。)
賃貸借終了日 平成13年3月9日
物件明渡の日 平成13年3月26日

(2) 第乙号事件

被告は,本物件明渡後に,原告による本物件の破損,汚損の修繕,原状回復費用として下記の費用合計金24万4100円を支出したとして,これと前記契約に基づき返還すべき敷金14万2000円及び本物件明渡後の日割賃料金1万1774円の合計金15万3774円を対当額で相殺した残額金9万0326円につき,原告及びその保証人である第乙号事件被告Aの両名に対してその支払を求めた。


壁ボード穴修理工事費        金1万5000円
クロス張替工事費          金7万6500円
床クッションフロア張替工事費    金8万1000円
換気扇取替工事費          金2万5000円
清掃費用 金3万5000円
消費税               金1万1600円

以上合計             金24万4100円

2 争いのない事実及び前提事実

(1) 当事者間の契約,敷金額,物件明渡後の日割賃料額及び物件明渡し日は前記1(1)のとおりであり,原告は契約の際に礼金として別途賃料の2箇月分金14万2000円を支払った。

(2) 本件建物は平成元年に新築され,床クッションフロア及び換気扇はその際に設備されたもので,その後は更新されていない。

(3) 壁ボード穴は原告の過失により生じたものである。

(4) 被告が原告の転居先住所の住民票を取得した。

(5) 被告の意を受けた仲介業者C株式会社(以下「仲介業者C」という。)の担当者が,本物件の明渡しに関連して被告Aの職場に電話をかけた。

3 争 点

(1) 原告が負担すべき修繕,原状回復費用はいくらか。

(2) 被告が被告Aの職場に電話をかけたり,原告の転居先住所の住民票を取得したことが不法行為としての違法性を帯びるか。

4 争点についての当事者の主張の要旨

(1) 争点(1)について

(被告)

ア クロス張替費用

壁ボード穴周辺部分のほか,全体に汚れがひどく,全面的に張り替えが必要である。

イ 床クッションフロア張替費用

台所の前付近1畳半の範囲のカビ,シミがひどく,清掃では除去不可能につき,既存のものの上から新しい部材を更に張り付ける方法で修繕した。

ウ 壁ボード穴修理費用

約10センチメートル程の穴があき,ボードの奥の方まで壊れており,ボードの取替が必要である。

エ 換気扇取替費用

全体に火を吹き上げたように焼け焦げ,漏電のため電気コードが熱融している状態で,そのまま使用するには危険があり取替が必要である。

オ 清掃費用

トイレ,浴室,台所等明渡しに際して清掃が行われた形跡がなく,原状回復するには業者による清掃が必要であった。

(原告)

ア クロス張替費用

原告はたばこも吸わず,きれいに居室を使用しており費用を負担する義務はない。

イ 床クッションフロア張替費用

台所水周り付近のクッションフロアの劣化は通常の使用によるものである。防水措置等が施されていないため,原告はマットを敷いたり,水滴を雑巾で拭き取ったりしながら調理等に使用した。

ウ 壁ボード穴修理費用

ボード穴の大きさは縦4センチメートル,横3センチメートルである。この費用は入居時に仲介業者である訴外Cの指示で加入した保険の適用を受けて支払う。

エ 換気扇取替費用

換気扇は破損しておらず,使用可能であった。換気扇の漏電があったとすれば,上部がクロス加工のみの壁に密接させないとガスコンロの設置が不可能な台所の構造及び換気扇の設置状況に原因があり,火災予防条例にも違反する危険な設備である。

オ 清掃費用

明渡しの際に清掃したので費用負担の義務はない。入居時にも,ゴキブリが生息していたり,風呂場にカビがある等汚れが残っている状態であった。

(2) 争点(2)について

(原告)

仲介業者Cに連絡先を知らせてあり,所在不明となっているわけではないのに,保証人である被告Aの職場にまで執拗に電話したり,不当に原告の住民票を取り寄せた。

(被告)

原告が指定した連絡先へ郵送した見積書等が該当者なしで返送されたり,保証人である被告Aに立ち会い確認の約束を破られたりしたため,連絡先を把握するために住民票を取得しただけである。

第3 当裁判所の判断

1 争点(1)(原告が負担すべき修繕,原状回復費用)について

(1) 壁クロス張替費用

原告が過失を認めている壁ボード穴の周辺については,少なくとも最小単位の張替は必要であり,その費用は壁ボード穴の発生に起因するものであるから原告が負担すべきである。そしてその負担すべき範囲面積は約5平方メートル分とするのが相当である。証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件壁クロスは原告入居の直前に張り替えられたものと認められるので,原告の退去時には2年余り経過していたことになる。そうすると,その残存価値は約60パーセントと評価するのが相当である。これを当てはめて原告の負担額を計算すると,証拠により認められる1平方メートルあたり1700円のクロス5平方メートル分8500円の60パーセントである5100円が原告が負担すべき額となる(1700×5×60%=5100)。

(2) 床クッションフロア張替費用

被告主張の劣化は認められるが,平成元年に設備されたものであることに照らすと,原告の不相当な使用によるものであることを認めるに足りる証拠はないというべきであり,原告には負担する義務はないと解するのが相当である。

(3) 壁ボード穴修理費用

穴の大きさの程度につき争いはあるが,原告の過失によるものであることは争いがないので,穴の大きさの程度にかかわらず原告は修理費用全額1万5000円を負担すべきである。被告が原告主張の保険の適用による支払手続に協力しないとしても,そのような支払い方法につき合意があったことを認めるに足りる証拠はないから,これを請求を拒絶する理由とすることはできない。

(4) 換気扇取替費用

証拠により認められる換気扇の焼け焦げ,電気コードの熱融の状況に照らすと取替の必要が認められ,その原因は原告の不相当な使用による劣化と認めるのが相当である。仮に原告主張のような台所の構造及び換気扇の設置状況の不備を考慮するとしても,本目的物件の他の居室においても同様の事態が発生しているとの証拠はなく,結局原告の不相当な使用によって生じた劣化と認めるのが相当である。換気扇が原告退去時に使用可能であったことは争いがないから,なお使用価値があったものと認められるが,平成元年に設備されたものであることを考慮するとその残存価値はせいぜい新規交換価格の10パーセントと評価するのが相当である。したがって,原告は2万5000円の10パーセントである2500円を負担すべき義務がある。

(5) 清掃費用

証拠により認められる明渡し直後の本物件の状況に照らすと,通常退去時に賃借人に期待される程度の清掃が行われていたとは認められず,被告が業者に清掃を依頼したことはやむを得ないものと認められる。そして,清掃業者は居室全体について一括して受注する実情に照らせば,業者への依頼が原告の不十分な清掃に起因する以上,原告はその全額3万5000円について費用負担の義務があるというべきである。

(6) まとめ

以上のとおりであるから,原告が負担すべき原状回復費用は壁クロス張替費用の一部5100円,壁ボード穴修理費用1万5000円,換気扇取替費用の一部2500円,清掃費用3万5000円及びこれらの合計に対する消費税2880円の合計6万0480円となる。そして,返還されるべき敷金14万2000円及び日割賃料金1万1774円の合計15万3774円からこれを差し引いた金9万3294円が原告に返還されるべき敷金となる。

2 争点(2)(被告の不法行為)について

賃貸人である被告が敷金,原状回復費用等の精算を話し合う目的で,原告と連絡が取れない状況の下で保証人である被告Aに電話することや,原告の連絡先を把握するために住民票を取得することは不法行為としての違法性を帯びるものとは考えられない。また,被告Aに対する電話が執拗に何回も繰り返されたことを認めるに足りる証拠はない。原告の請求は理由がない。

3 以上のとおりであって,原告の請求は金9万3294円の返還を求める限度で理由があるのでこれを認容し,被告の請求は理由がないのでこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。

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