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名古屋簡裁平成14年12月17日判決

事件番号  :平成14年(ハ)第6602号
事件名   :敷金返還請求
裁判年月日 :H14.12.17
裁判所名  :名古屋簡易裁判所

主文

1、被告は,原告に対し,金19万4050円及びこれに対する平成14年6月28日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

2、原告のその余の請求を棄却する。

3、訴訟費用は,これを5分し,その4を被告の,その1を原告の負担とする。

4、この判決は,原告勝訴部分に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1 請求

被告は,原告に対し,金23万5000円及びこれに対する平成14年6月28日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

第2 事案の概要

1 請求原因の要旨

原告が,被告から平成6年8月1日に,期間2年,賃料1か月11万0240円(共益費,駐車場料を含む。),敷金47万円等の条件で賃借した愛知県a郡b町c番地所在,dフォーラム202号室(以下「本件貸室」という。)の賃貸借契約(以下「本件契約」という。)に基づき,敷金の償却50パーセントを控除した残額23万5000円及びこれに対する本件貸室明け渡し及び確認の日から30日経過後である平成14年6月28日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の請求

2 中心的争点

被告は,本件契約の契約書には,保証金(敷金)50パーセント償却のほか修理費実費償却の定めがあり,本件契約書13条2項で原告の負担とされているリフォーム工事の費用は,52万7572円となるので,被告が原告に返還すべき敷金の残額はないと主張して争うのでこの点が中心的争点である。

第3 当裁判所の判断

1 本件契約書の規定の解釈

本件契約書(甲1)の1頁B「賃料等その他」欄には,「保証金(敷金)470,000円」の記載の下に「50%償却」と「修理費実費償却」の約定の記載がある。

本件契約書8条5項には,「保証金は,本契約の終了により,乙(原告)が本物件を明け渡しかつ甲(被告)の確認を得た後,本契約に基づく未払い債務,その他乙が負担すべきものがあれば,それらを差し引いた上,その残額を甲の確認日から30日以内に,甲より乙に返還する。」との定めがある。

本件契約書13条2項には,「前項の場合(注:契約終了の場合),乙は自己の負担において,別表B第1表に掲げる修繕及び,その他乙の故意,過失による汚損,破損,若しくは滅失の箇所の補修,清掃,又本物件に付加した造作,その他の設備等を撤去し,すべてを現状に復して甲に明け渡すものとする。」との定めがあり,別表B第1表では,「入居者の日常使用及退去による修理費の負担範囲」として,項目別に修理種別,修理内容,修理基準を定めている。

賃貸借契約においては,賃貸人は,賃料を徴収する権利を有する一方,賃貸目的物を賃借人の使用に供する義務を負担するのであるから,賃借人の使用,収益に伴う賃貸目的物の自然の消耗や破損の負担は,本来賃貸人の負担に属するものである(民法606条参照)。しかし,特約によって,賃貸人の義務を免れ,あるいは,これを賃借人側の負担とすることは,私的自治の原則からもとより可能である。

特約のない場合の原状回復の限度としては,
チ賃借人が付加した造作の収去,
ツ賃借人が通常の使用の限度を超える方法により賃借物の価値を減耗させたときの復旧費用
については,賃借人が負担する必要があるが,
テ賃借期間中の年月の経過による減価分,
ト賃貸借契約で予定している通常の利用による価値の低下分
は,賃貸借の本来の対価というべきものであって,その減価を賃借人に負担させることはできないものと考えられる。

E本件契約では,その13条2項において前記のとおり退去時における賃借人の原状回復義務が定められているので,これが前述のDのテ,トについての賃借人の負担義務を定めた特約にあたるか否かにつき検討する。

本件契約書13条2項の引用する別表B第1表の内容としては,その表題の示すとおり,入居者の入居中における日常使用にあたって,修理を必要とする場合の費用の負担者を賃貸人でなく賃借人であると規定し,この基準を退去時にも引用してその義務の内容としているものであると解される。したがって,入居中に賃借人が修理をする必要のないような項目について,退去するにあたって突然賃借人に修理の義務が発生するという内容であるとまではいえない。本件契約書13条2項は,「その他乙の故意,過失による汚損,破損,若しくは滅失の箇所の補修」等を賃借人の原状回復義務のある範囲として定め,その前半の「別表B第1表に掲げる修繕」は例示的に掲げられているに過ぎないものと解される。敷金の償却費として50パーセントの差し引きがあることも併せ考えると,本件契約書13条2項の規定は,契約終了時の賃借人の一般的な原状回復義務(前記チ,ツの内容)を規定したものと解され,前記特約にあたる条項と考えることはできない。
賃貸人としては,賃借人の退去に際し,通常の使用による減耗,汚損等も賃借人の負担で改修したいのであれば,契約条項で明確に特約を定めて,賃借人の同意を得た上で契約すべきものであるが,本件の原告は,入居の際の仲介業者の説明として,50パーセントの償却の中に退去の際のリフォーム費用も含まれていると聞いていたとしており,通常の使用による減耗,汚損等の原状回復費用も別途負担することについての明確な合意の存在も認められない。

2 被告の負担すべき費用

前述したところから,本件貸室の原状回復費用のうち,原告が負担するべき項目は,キッチン上棚取手取付費1000円(破損),排水エルボー費3000円(欠損)及び室内清掃費3万5000円の合計金3万9000円と消費税1950円の総合計金4万0950円であることが認められる(甲2,原告本人)。

3 結論

以上のところを総合すると,原告の請求は,被告が原告に対し支払うべき敷金23万5000円から,原告が被告に支払うべき原状回復費用4万0950円を差し引いた金19万4050円の支払いを求める限度で理由があるのでこれを認容し,その余は理由がないことに帰するのでこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

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