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平成19年(ワ)第1793号 更新料返還等請求事件 第1回法廷  被告意見陳述書要旨

2009年9月 7日 23:51

※更新料問題を考える会ブログより
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平成19年(ワ)第1793号 更新料返還等請求事件 平成19年8月7日 第1回法廷

意見陳述書 要旨

被告=貸主側(田中伸弁護士陳述)

●1.
本件訴訟での更新料返還請求は、賃貸借契約当事者の信義に反する請求である。原告は、重要事項説明を受け、更新料特約のある契約書に署名・捺印をし、更新料支払いを約束している。また、原告が本件訴訟で返還請求している更新料は、各更新時期にすべて合意更新をして異議なく支払った更新料である。しかるに、原告は、退去後に本件訴訟を提起し、過去5回分の更新料請求に及んでいる。原告は約束を一方的に覆し、支払った更新料金額について、事がすべて済んだ後に本件訴訟を起こしているもので、原告の本件訴訟提起は、道徳・倫理・信義に反している。約束を守るということは社会の最も基本的な原理の一つであって、このような請求が認められることがあってはならない。

●2.
原告は、賃料不払いを免れる手段として更新料返還請求を持ち出している。もともと原告は、各更新時に更新料を異議なく支払っていたが、賃料1ヶ月を未払いのまま、解約申し入れをして本件建物から退去したものである。原告は、1ヶ月分の未払賃料の支払いを管理会社から請求され、その支払いを免れる口実として、更新料返還請求を主張するに至った経過がある。

●3.
更新料の法的性格は、賃料の補充及び更新の地位確保の対価であり、民法に根拠を持つもので、合理性・対価性があり、借主に一方的に不利な金員ではない。原告は、更新料という賃料を被告に支払ってきたものである。

●4.
更新料は古くから社会的に承認されてきたものであり、更新料特約は、昭和30年代・40年代ころから、京都だけでなく、東京、愛知、福岡といったところを中心にほぼ全国的に行われてきた。更新料特約については、社宅を借りている企業も、また行政も、その存在を承認し、更新料について補助をなしてきた。特に生活保護においては、行政が更新料を生活保護の扶助対象として認めてきた経過がある。

●5.
建物賃貸借の分野は、消費者契約法が対象とする交渉力・情報力の格差が生じている分野ではない。交渉力の格差といっても、賃貸住宅は全国平均で10%以上がすでに空室となっている状況で、貸主は借主よりもむしろ弱い立場にある。また貸主は、多額の借入れをして投資をしているが、構造上の強度、アスベスト、犯罪事件、火災・災害の事故等の物件の様々なリスクを抱えており、他方、借主は転居するリスクを負っているにすぎない。貸主の立場は借主よりもリスクにさらされている。情報力の格差に関しても、賃借人に必要な情報は、パンフレット、雑誌、インターネット等で容易に手に入り、借主よりも貸主の情報力が勝っているものではない。建物賃貸借の分野は、交渉力・情報力の格差がある典型的な消費者問題の分野ではなく、消費者契約法の適用が疑問視される領域である。また、零細な個人貸主も多く、本件の原告も零細個人である。更新料特約に消費者契約法10条を適用することは、消費者契約法の拡大適用である。

●6.
更新料特約が消費者契約法10条に違反しないことについては、すでに平成17年東京地裁、平成18年明石簡裁の少なくとも2件の訴訟において、判例として出されている。

●7.
本件訴訟では、原告の訴状における主張で、契約書の記載と異なった保証金の主張がなされている。また、原告が提出している甲1号証にも書き換えの跡がある。原告は、事実関係については正々堂々と主張すべきであり、事実を隠すことや事実でないことを主張すべきではない。本件訴訟においては、両当事者は、事実関係について事実を素直に述べ、裁判所の判断を仰ぐべきである。本件訴訟での更新料特約は消費者契約法等に違反せず、原告の更新料返還請求等は直ちに棄却されるべきである。

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