家主さんの餓死――豊中60代姉妹死亡事件を読み説く②

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われわれの商売――地主家主業は重心の低い商売でこけにくいですが、いったんひころぶとリカバリーはまず聞きません。

確かに自宅もあってマンションも持ってて駐車場も持ってるような人が、
事業をしてるわけでもないのにいきなり全資産差し押さえになるほどの負債を抱え込むとは思えないよな。
普通なら家に居るだけで毎月生活できるくらいの収入があったはず。」

↑これは「まちBBS」の書き込みですが、この姉妹の場合、おそらく父母の相続税が原因、と思われます。

当該物件は特優賃です。
家主側から見た特優賃の特徴をかいつまんでいいますと。

   建設費は高め(特優賃仕様)

   公社が10年~20年一括借り上げ(途中解約リスクが回避できないのは民間と一緒)

   建設には補助金がでる。

という感じです。
悪くないやん、て感じに見えますね。家主から見た特優賃にはデメリットもあるのですが、それはこちらの記事を見ていただくとして、

http://allabout.co.jp/r_house/gc/31108/

この姉妹のケースを考察してみます。

記事から推察するに、姉妹ともお子さんはいないようです。
建築時に50代。子どもなし。ローン期間は20年程度だったのではないでしょうか?
60
平米、2LDK、15戸です。差押えたのは豊中市のようですから、市民税か固定資産税の滞納でしょう。逆にいうとローンの返済はしていたということになります。
ローンを返すと税金が出なかったということですね。

以下は勝手な設定。
建築費を戸当たり1000万円、203%フルローン、豊中市の固定資産税はわかりませんが、仮に土地建物で150万円とします。
エレベーターがあるので電気代が40万円/年。エレベーターの管理費等雑費で100万円/年とします。

特優賃の借上げ制度や利子補給制度はよく知りませんので、利子補給なし、借上げは査定家賃12万円×80%=¥88000//月、改装費は公社持ちとしてシミュレートしてみました。

他に収入がなければ、建築初年度の税引後CFは290万ほど。7年目には200万円を割り込みます。さらに数年たつとデッドクロスによる赤字期間が始まります。(他にも不動産収入があったようですが、収入によっては税率があがるのでもっと悪くなります)
ただ、これだけなら3-4年分の収入をストックしておけば乗り切れるので、散在しないかぎり破たんするような事態にはなりません(大修理はしんどいけど)。

それでもなお困窮するというのは、「経費にならない多額の支出があった」。
1
10日朝日新聞(大阪版)社会面によりますと、「20年ほど前に父母があいついで死亡」「地代などは税金の支払いにあてている」。
すなわち20年前の相続税支払いで20年の延納を選択したということですね。相続税の支払いは当然のことながら経費になりません。ちょうどバブル期の相続税です。
順調にいってればちょうど今年あたり支払が終わるころです。
でもこの姉妹の場合、地代収入のみで、相続税を払っていくことは厳しかった。
10
年前に土地を売ったことが記事に見えます。これはおそらく、マンション建設の頭金ではなく、納税資金にあてるためであったでしょう。
マンションを建てればその収入で相続税が払える。特優賃なら公社の借上げだから確実。初めの10年間で相続税の支払いも終わる。そのあとは家賃収入で生活を。
そんな考えであったと思います。
目論見と違ったのはここでもおそらく税金。

「収入によっては税率があがるので手残りはもっと悪くなる」

提案者からみせられる事業計画書には、その物件の収入から計算した所得税が加味されることはあっても、相続税の延納分や他の収入による税率の上昇が加味されることはありません。
仮に最高税率の50%(住民税含む)だったとすると、このマンションからの税引後CFは、初年度で200万円強、7年目には80万円程度になってしまいます。
ローンを払って、相続税を払うと、地方税が払えなかった→差押えを受けた=賃貸物件は権利者の強制管理となり、姉妹の収入はゼロになった、という構図です。
「地代」という言葉が記事中にありました。当該マンションと自宅以外の不動産の多くは借地であり、売却が難しい状態であったと思われます。延納中は貸宅地でも国が抵当権を設定しますし。

国や自治体は、裁判手続きを経なくても差押えができます。なので金融機関に先んじて差押えができたのかもしれません。

生活保護をなぜできなかったのか、本人たちがなぜ申請しなかったのか。
これが記事中で問題になっています。
姉妹が借金を申し込んだ親戚が同じ市内に住んでいます。差押えを受けているとはいえ、姉妹には資産があります。年金を受給していたかどうかは不明です。
個人的には、破産手続が必要だと思いますが……。思いきれなかったのでしょう……

もしもマンションがなければ、10年弱前に破たんは訪れたのだと思います。
その時点ですべての資産を売却してプラマイゼロになるか、どちらかが残ったかはわかりません。
マンションを建てた結果として起こったことは、破たん時期は延びたこと、そして債務はさらに膨らんだこと。

私の実家もバブル期に延納を選択した相続税が払いきれなくなって、数年前に自宅を含むほとんどの土地を売却しました。ちょっとだけ残った所に今住んで、商売やってます。商売も引っ越しと事業縮小が必要でしたが、どうにかうまくいきました。
このままでは破たんする、なにとかしなきゃ、で家族会議をした時点で、マンションを建てることのできる土地は、実は残ってました。
そこに「マンションを建てる」という提案は誰もしませんでしたし、幸いにして提案を持ち込む業者もありませんでした。
実家は不動産以外の事業収入がありましたし、子ども(私の兄弟)もそれぞれ幸いそれなりの収入を得ています。
でもこの姉妹のように不動産収入のみだったら? 
「活用できる土地があるんだから、それでなんとか」
と誰かがきっと思ったでしょう。そこに一見うまくいきそうな事業計画書が提案として持ち込まれたら?
きっと建てていたと思います。

今、うちは不動産収入のみで生計をたてています。(不動産の管理で思い切り働いてるので全然不労所得じゃありません^^;
なのでほんとに他人事とは思えないのです。

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60代姉妹遺体:1人は餓死か 大阪・豊中のマンション@毎日新聞より  大阪府豊中市のマンションで姉妹とみられる女性2人の変死体が見つかった事件で、2人は12月22日ごろ ... 続きを読む

コメント(1)

こちらの新聞にあまり詳細がなく、
検索しなくちゃと思っていたところでした。
非常に身につまされながら読みました。
ありがとうございました。

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このページは、が2011年1月10日 15:22に書いたブログ記事です。

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