2009年9月アーカイブ

実は1LDK メゾネットを新築中です。

かなり消極的な理由での新規立ち上げなのですが、その話はまあそのうちに。

2週間ほど前から地盤と基礎をやってますが、ここでいきなり費用UPになりました。
地盤調査もちゃんとやって、建築確認もおりた、ベタ基礎。
工務店の特定住宅瑕疵担保の保険から注文がついて、結局、杭うちすることになっちゃった。
3戸なのに60万円のUPは痛い。。。。

が、将来の安全料と思わんとしゃぁないですね。。。。

どうも8月からこっち気持ちがローに入ってしまい、あちこちに迷惑かけてますm(_ _)m

無理せずぼちぼちやっていこうと思います。

2009 04 30_3744.JPG

「不審者を見たらすぐ110番」

ありがちな貼り紙の内容。

で、その内容にあまりにも似合わないラブリーなシールのデコレーション。
本文が手書きなのも味がある。

賃貸物件のローン。

10年固定で借りていたのだが、当時の金利と比べると、今はそれなりに下がっていて。
見直したら金利下がるんじゃないか、とボスの命を受けて銀行へ。

固定期間中の返済には違約金がかかるが、それを払ってもトータルで得するだろう、というわけだ。
ボスのこういう指示で、同じ銀行内で借り換え手続きをしたこともあれば、他行へ移したこともあった。

でもって、担当者にこれこれしかじか、と言って、現在の金利を提示してもらうことに。

最後にのいわく、担当者

「こういうお話って、どういったきっかけで……」

「住宅ローン金利を参考に、これぐらい動いたら……、という感じでいつもボスが見てます」

「へぇ~、企業みたいですね」←悪気ゼロ

やっぱりこの商売って、不労所得に思われてるのね。。。。。。。。

と、実感しました。。。。。。だって、この担当者さんいい人なんですよ、ほんとに。

たまっていることを片づけている毎日です。

更新料裁判
とりあえず「大家さんのひとりごと」に特集コーナー作りました。
でもまだちゃんと読めてない。。。。。orz
地元大阪に更新料はないので、更新料慣習に未練はさらさらありません(慣習のある地域に物件は持ってるけど)。消えゆく慣習だと思ってます。
でも違法呼ばわりはしないでほしい。広まった慣習であるってことは、少なくとも一時期には消費者に受け入れられた慣習だってことです。
でもって、申込書にも重説にも契約書にも書いてある費用を「交渉力」や「理解」を理由にされると、
消費者をばかにすんな。
契約をばかにすんな。
と、言いたい。なお、このあたりまだ判例読んでないうえでのカキコです。まわりの雰囲気に対してブツクサ言うてるわけです。
でも一方で、一部のあまりよくない業者さんのマズイ付帯商法(消毒料とか浄水器とかですね)にひっかかってる方を見ると、やむをえないかと思う自分がいたり。でもこれも割を食うの貸主なんだけどな。。。。
「法的性質ない金員は違法」という論調をときどき見ますが、「法的性質」なるものは必然的に後づけでしかありません。否定するにしろ肯定するにしろ、法は現実の後追いしかできない。

ゴミ置き場も一つ追加です。
鮮やかな、赤 のゴミ置き場
たまってる写真もなんとかしなきゃな。。。。

入院中のばばさま。
結局胃ろうを作りました。やっぱ顔色良くなったわ。
でもまだ熱が断続的に出ます。なんだかなぁ。

新築物件の着工で
境界確定が不調に終わったお隣にも挨拶にいきました。
いろいろ言われたので、もっぺん土地家屋調査士さんに説明に行ってもらうと、しょっぱなから態度が違う。そりゃあ確かに私はヨメで女性でしょうけど、あんな態度とらなくても。
で、切れなかった私は少し成長したのかも、ということにしておきます。

2009 08 10_4323.JPG

ゴミ置き場をスタイリッシュに、というのは、ちょっと凝り性のオーナーなら、あるいはデザイナー系の建築関係者なら大きな目標である。

実用一辺倒だったゴミ置き場も、ステキなものがだんだん増えてきた。
傾向としては、ビルとの調和&一体化を狙ったものと、ゴミ置場自体を一種の見せ場と心得るものとの二つがあり、この写真のゴミ置き場は後者である。

引き戸でパンチングメタルは最近の建築物によくある選択。
通常はアルミ色であるのを、鮮やかな赤を持ってきた。
赤にもいろいろあるがこの赤は秀逸である。
特に道路向かいからみると美しい。

近寄って中を見ようかと思ったが......時間の都合で思い出は美しいままである。

平成19年(ワ)第1793号 更新料返還等請求事件(貸主勝訴)の控訴事件

※更新料問題を考える会ブログより

まとめ記事はこちら

 

平成19年(ワ)第1793号 更新料返還等請求事件 平成19年11月16日 第3回法廷

被告準備書面

第一 更新料の適法性

●1
更新料は,賃貸借契約当事者がその支払いにつき合意をし,約束した更新料条項に基づく金員である。更新料条項は,実際に借主の支出かつ貸主の収入と合意されている条項であり,賃貸借契約条件において,賃料等と並んで重要な契約条件である。
更新料は法的性質として,賃料の補充,更新の地位(借家権)確保又は強化の側面を複合して有しており,公序良俗に違反しないばかりでなく,消費者契約法10条にも勿論違反しない。
●2
原告は,本件更新料返還訴訟について,「まさに時代は消費者利益の保護を標榜しており,時代の流れに沿ったものである」と主張している。更に原告は,「更新料条項は合理性がなく,その徴求は脱法的,欺瞞的,詐欺的であり,その不当性は驚くばかりで,消費者契約法10条,公序良俗に違反して無効である」と主張している。
しかしこの見解は,更新料についての実情把握,評価を誤っており失当である。
●3
現代社会が消費者保護の流れにあることは事実であるが,行き過ぎた消費者保護がなされてはならない。消費者保護だけでなく,契約者の自己責任,私的自治,契約の自由,取引の安全,市場原理も,消費者保護と調和させて図らなければならない。
●4
消費者契約法制定当時から,消費者契約法10条の拡大適用については,懸念が示されていた。
▼(1)
第一に,契約の目的や対価等,契約の中心部分を定める条項の不当性が問題となっている場合には,消費者契約法10条の適用対象とならないとする見解も有力に示されている。その見解の理由としては,第1に契約の主要な目的や価格に関する事項は,市場に委ねられるべき事項である,第2に契約締結過程で消費者に十分な情報提供が行われるようにすれば弊害はない,第3に著しい対価の不均衡については公序良俗違反(民法90条)で救済できることなどが理由とされている。
▼(2)
第二に,個別交渉を経た契約について,消費者契約法10条の適用対象とならない見解も有力に示されている。その見解の理由として,第1に個別交渉があるときにまで不当条項規制を行うのは自己決定に基づく自己責任という基本原理と相容れないこと,第2に契約締結過程で消費者に十分な条項提供が行われるようにすれば弊害はないこと,第3に個別交渉を経た契約についても公序良俗違反(民法90条)による救済は可能であることなどが理由とされている。
●5
最高裁判所平成18年11月27日第2小法廷判決(いわゆる学納金判決)は,学納金不返還特約等の消費者契約法10条該当性について,「前記のとおり,不返還特約のうち平均的な損害を超える部分に限って消費者契約法9条1号によって無効とされるのであり,前記の不返還特約の目的,意義に照らすと,同号によって無効とならない部分が,同法10条にいう「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に該当しないことは明らかである。また,入学金の納付の定めは,入学し得る地位を取得するための対価に関する定めであるから,同条にいう「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」には該当せず,同条適用の要件を欠くものというべきである。」と判示している。すなわち,消費者契約法10条は,そもそも対価的給付条項についてはその射程外であり,対価性の著しい不均衡については,民法90条にその解決を委ねているのである。
●6
本件訴訟は,中心条項・個別交渉条項についての消費者契約法10条の適用の懸念が的中している事案である。
更新料条項は,まさに使用収益及び更新の地位(借家権)の確保及び強化の対価を定める中心条項であり,また個別交渉を経て締結される個別交渉条項である。両条項については,消費者契約法10条が適用されるべきではなく,適用されるにしても,その要件該当性の判断は他の場合に比して厳格に判断されなければならない。
●7
原告は,消費者運動を標榜するあまり,その進路を逸脱している。原告は,本来消費者契約法10条を適用とすべきではない更新料条項まで適用を主張し,無効を主張している。原告は,ただ消費者保護一辺倒の考えを主張するだけでなく,冷静に更新料条項の実情を見るべきであるし,また契約者の自己責任,契約の自由,取引の安全,市場原理にも考慮を及ぼすべきである。
●8
更新料条項は遅くとも昭和40年代から約40年以上にもわたって広く社会で行われ,民間の各賃貸当事者だけでなく,行政機関,司法機関も活用してきたもので,社会的に承認された条項,制度である。その無効性を主張している人達は,社会全体から見れば,賃貸借当事者のうち突出したごく一部の人達に過ぎない。更新料条項に消費者契約法10条を適用主張することは,社会的にも支持を得られていない事項である。

 

第二 更新料の社会的承認と無効とする弊害
●1
借家における更新料条項は原告も認めるとおり,最近になって普及してきたものではなく,遅くとも昭和40年代から広く用いられてきている。また,地域的に見ても,更新料条項を使用している地域は,北海道から沖縄までの都市部で広い範囲にわたる。更新料条項は,東京・京都だけでなく,北海道・関東・長野・愛知・福岡・沖縄で広く今なお採用されている。消費者契約法が平成13年4月1日施行されているが,すでに同法施行から6年6ヶ月以上も経過しているにもかかわらず,更新料条項は今なお広く用いられている。勿論,当然のことながら,更新料条項のない賃貸借契約も,これら更新料条項が用いられている地域においても相当数をしめ,借主は更新料条項のない契約も選択できるようになっている。

●2
更新料条項は,契約当事者間で賃貸借契約時に合意されるだけでなく,企業・行政・司法の場でも異議なく認められてきた。
▼(1)
例えば,企業では,従業員のためにその賃貸物件について,更新料の補助制度を実施している企業もある。

▼(2)
行政においては,「1個のおにぎりも買えない」と評されるほど扶助認定が厳しいとされる生活保護においても,住宅扶助として更新料の扶助がなされてきている。生活保護法14条では住宅扶助を規定し,同法33条では住宅扶助を金銭給付によって行うことを定めている。それを受けて,生活保護法による保護の基準及び生活保護法による保護の実施要領で,更新料扶助が制度化されている。
京都市の場合,平成19年4月1日現在,生活保護法による更新料扶助は,6人まで1回あたり5万5000円,7人以上1回あたり6万6000円支給されている。
▼(3)
また,法の番人たる裁判所の司法の分野においても,更新料条項は活用されてきた。裁判所における調停条項,和解条項に,借家の更新料条項は広く活用されてきたことは,公知の事実である。
さらに,公証人役場における建物賃貸借契約に関する公正証書の作成及び私製の賃貸借契約の認証においても,更新料条項は広く用いられてきている。

●3
このように社会において,更新料条項が,時間的にも地域的にも分野的にも広く活用されてきたことは,紛れもない事実である。原告は,民間における更新料条項の使用については無効を主張しているが,生活保護法による更新料扶助,裁判所における調停条項,和解調書等での更新料条項の使用及び公証人役場における公正証書等の更新料条項の使用については何ら言及していない。原告はこの点について,自己の主張の都合の悪い部分であるので,意図的に沈黙していると考えられる。更新料条項は,実際には,上記に述べたとおり社会的実態としては建物賃貸借で広く根付いた条項であり,行政,司法という国家機関でも認められてきている条項である。

●4
そのように社会的に根付き,承認されてきた条項を,消費者契約法10条が施行されたからといって,軽々に適用すべきものではないことは論を待たない。原告の主張を推し進めると,民間だけでなく,行政,司法の分野においても,居住用建物賃貸借における更新料条項の使用は消費者契約法10条に違反するので即時にやめるべきとの結論に至ることになる。

●5
即ち,更新料条項を消費者契約法10条違反で無効だとすると,貸主は借主に対し,授受された更新料を不当利得として返還しなければならないことになる。また,生活保護による更新料扶助支給も消費者契約法10条違反なので,制度として廃止になる。さらに,消費者契約法施行後締結された和解調書,調停調書,公正証書等の更新料条項は無効となり,その効力は認められず,その和解調書,公正証書等に基づき授受された更新料も返還すべきものとなるし,それらに基づく更新料支払いについての強制執行も勿論許されないことになる。
●6
空家でない民間借家の数は,全国で約900万戸あるとされている中で,仮に全貸家物件中10%で更新料条項が使用されていれば,約90万件の契約に影響が出ることになる。貸家物件中20%とすると,約180万件の建物賃貸借契約の更新料条項に影響が生ずることになる。
それだけ社会で広く用いられている更新料条項を無効とするならば,契約当事者のみならず,関係当事者に大混乱の事態を引き起こすことは必定である。

●7
原告は消費者運動を標榜しているが,実は,更新料条項の無効主張は消費者保護にも反する結果となる。ただでさえ,支給認定が厳しい生活保護の分野において,住宅扶助の更新料支給が廃止されると,その直撃を受けるのは入居者たる消費者である。更新料扶助が打ち切られるとなると,生活保護受給者は,更新料物件よりも高く設定される家賃の物件を借りざるを得ない。他方,生活保護受給者の家賃扶助額には限度があるので,生活保護者はより生活を切り詰めて家賃を支払わなければならなくなる。(京都市の場合の家賃の住宅扶助は月額1人世帯の場合は4万2500円,6人まで5万5000円,7人以上6万6000円を限度に支給されている。)
つまり,原告の更新料条項無効の主張は,消費者保護を目指すことを標榜しているものの,実は木を見て森を見ない結果となるものであり,一番に保護されるべき,社会的弱者の保護を切り捨てる主張となっている。
●8
以上のとおり,更新料条項が消費者契約法10条に違反するという主張は,社会の実態を無視して消費者保護に偏りすぎたものであり,社会に大混乱及び社会的弱者の保護の切り捨てをもたらす主張であり,結論としてとり得ない主張であることは明白である。


第三 更新料裁判の今までの裁判例
●1
今までの裁判例では,更新料条項の有効性を基本的に承認している。更新料裁判も今までいくつかなされてきているが,その多くは,更新料条項があいまいな文言であったために合理的意思解釈をめぐって争われてきたもので,明確な文言の更新料条項を無効としたものは,その金額が余りにも法外であり,民法90条違反により無効としたものが一部あるに過ぎない。

●2
消費者契約法10条違反との主張の裁判はほとんどないと考えられるが,被告が把握し本件訴訟に提出している東京地方裁判所平成17年10月26日判決,明石簡易裁判所平成18年8月28日判決では,いずれも更新料条項は消費者契約法10条に違反しないとの判断がなされている。

●3
つまり,昭和40年代から更新料条項が用いられてきた時間的経過及びその何百万事例といった更新料条項を含んだ契約数からすれば,更新料条項の有効性が争われた事例は,ごくごく一部の借主の事例でしかない。
更新料条項の消費者契約法10条違反を理由とする無効主張は,一部の借主から主張されているに過ぎず,社会的に支持されていない。社会的に支持されているのなら,消費者契約法が平成13年4月1日に施行された時間的経過及び全体の契約数からして,もっと多くの訴訟がすでに提起されているはずである。

 

第四 本件訴訟の争点
●1
本件訴訟の争点は,本件更新料条項が民法90条の公序良俗違反に該当するかどうか,消費者契約法10条違反に該当するかどうかである。

●2
借家における更新料条項は,昭和40年代から社会で広く行われ,判例上も民法90条違反としたものはごく僅かしなかい。更新料条項が月額賃料の5倍以上の場合を定めた場合などは,暴利行為で公序良俗違反とされる余地もあるが(東京地判S56.11.24,判タ467号122頁),2~3ヶ月程度では公序良俗違反には該当しない(東京地判S54.9.3,判タ402号120頁)(東京地判S61.10.15,判タ106頁)ことは,各裁判例の認めるところである。

●3
本件賃貸借契約での更新料支払い合意は,原告主張のように,決して法外な金額の更新料支払いが約束されているものではない。
▼(1)
本件建物は,京都市左京区下鴨の,京都でも有数の良好な閑静な住宅地に所在し,鉄骨ブロック4階建の昭和58年1月31日新築の建物の一部であり,その間取り,設備としても,電気・ガス・水道・6帖・台所・トイレ・給湯設備・冷暖房設備ありの物件である。

▼(2)
その中で,本件建物賃料は4万5000円と下鴨地区の他の物件と比して比較的低い賃料設定がなされている。本件建物賃料の月額賃料は5万円でも可能な物件であるが,更新料併用方式の賃料設定のため,月払い賃料は4万5000円で,更新料が1年毎に10万円と設定されている。
▼(3)
更新料の多い少ないは単純に月額賃料の比較で決められるべき問題ではない。月額賃料が比較的低い場合は,更新料を一定金額で決めていれば,月額賃料に対する割合は,跳ね上がることになり,月額賃料が増額改訂されればその割合は少なくなる。従って,賃料額及び更新料額の絶対的な金額そのもので判断がなされなければならない。
▼(4)
本件では,純粋に月額賃料との比率で見ても2.22ヶ月であり,上記判例からしても許容範囲と言うべきである。
▼(5)
従って,本件でも更新料条項が民法90条の公序良俗違反に該当しないことは明らかである。
●4
本件で問題とされるべきは,本件更新料条項が消費者契約法10条に違反するかどうかである。この点については,消費者契約法が平成13年4月1日に施行されているので,被告としても裁判所に対し真正面から本件更新料条項が消費者契約法10条に違反しないとの判断を下していただくことを求めるものである。その際に注意されるべき点は,本件更新料条項が消費者契約法10条違反に該当するかどうかは,あくまで消費者契約法10条の要件に即してなされるべきであるという点である。
●5
▼(1)
消費者契約法10条は,「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって,民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは,無効とする。」と定めている。
▼(2)
つまり,本件更新料条項が消費者契約法10条違反と判断されるには,本件更新料条項が,前段要件の「民法,商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し,消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項」にも,後段要件の「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」にも両方該当する場合でなければならない。
▼(3)
ところが,原告の平成19年11月9日付準備書面では,本件更新料条項の消費者契約法10条の要件の該当性判断であるべき論述が,随所で更新料の不合理性判断にすり替えられて論述されている。消費者契約法10条該当性の要件は,前段要件,後段要件の2つの要件であり,原告がすり替え主張している更新料条項の不合理性という要件ではない。不合理性という要件は,消費者契約法10条の明文に反するだけでなく,曖昧かつ多義的で,不適切である。
▼(4)
本件更新料条項の消費者契約法10条の該当性は,本件更新料条項前段要件,後段要件とも満たすものであるかどうか判断されなければならない。


第五 消費者契約法10条前段要件について
●1
建物賃貸借契約においては,建物の使用収益の対価として契約当事者間で賃料の支払いが合意されることは言うまでもない。契約当事者間で,その賃料を取り決める場合に,月払い賃料一本で取り決めることもあるし(「月払い賃料一本方式」という),賃料の年払い,あるいは一括払いも取り決めることがある。さらに,賃料以外に,更新料を併用して取り決める場合もある(「更新料併用方式」という)。更新料は,月払い賃料に加えて更新時に更新料という賃料を併用して支払う,賃料支払いの一方式として理解されるべきものである。

●2
即ち,借主においては,賃貸借契約を締結する前に更新料が条件提示されている場合は,どの借主も月払い賃料に加えて更新時に更新料の支払いを考慮して賃借物件を選択している。また,貸主においても,更新料の条件提示をする場合は,賃貸借契約が締結されれば,月払い賃料に加えて契約期間終了後の賃貸借契約継続に対して更新料が一時金として入ってくることを前提として条件提示をしている。借家において,更新料条項が昭和40年代から採用され,社会で広く更新料の授受がなされてきたのは,契約当事者が更新料の法的性質を意識しているにせよ意識していないにせよ,賃料支払いの一形式として了解してきたからに他ならない。
●3
原告の主張は,消費者契約法の適用のある個人の居住用の建物賃貸借契約では,月払い賃料一本方式の契約方式しか認めないとの主張と考えられるが,この主張こそ,消費者運動の政治的スローガンであり,法的には何ら根拠のないものである。
●4
個人の居住用建物賃貸借においても,必ず月払い賃料一本方式で賃料を決めなければならないというものではない。月払い賃料一本方式で賃料設定をすると,確かに物件ごとの賃貸条件を比較しやすいという利点がないではないが,他方,画一的,一面的な契約条件しか設定できず,契約当事者及び物件の多様なニーズに応ずることのできないというデメリットが生ずることになる。私的自治・契約自由の原則から,契約当事者のニーズに応じて創意工夫された各種の賃料支払い方式が認められるべきである。
●5
更新料条項が用いられる合理性については次のとおり例を挙げることができる。
▼(1)
更新料併用方式の条件設定の場合,月払い賃料一本方式の場合よりも月額賃料は低く設定されている。(つまり,更新料併用方式の物件は更新料が存在するので,月払い賃料一本方式の物件よりも月払い賃料を下げ,その部分を更新料で補充するということにしている。)そのため,更新料併用方式の賃料支払方式であれば,借主としては,契約当初から更新までは低く設定された賃料で借りることができ,仲介手数料,敷金等も少なくてすみ(月払い賃料を基準に仲介手数料,敷金の金額が決定されることが多いため),初期の支払費用が少なくてすむので,入居しやすいという利点がある。
▼(2)
あるいは,契約締結時には収入が少ないが,更新時までには収入の増加が見込める借主も存在する。そのような借主にとっては,月払い賃料一本方式に比して月払い賃料を支払いやすく,しかも更新時には収入が増加しているので更新料も容易に支払うことができるという利点がある。
京都で多く見られる大学生の賃借の場合も,大学入学後のアルバイトにより期間経過後には支払いが容易になるという事例が多数ある。勤務をし始めた社会人の場合もそうである。
▼(3)
更に,更新前に退去を予定する学生,短期勤務者,臨時教員等の短期間の借主にとっては,更新料併用方式の物件というのはメリットがある。つまり,短期借主にとっては,月払い賃料一本方式の物件よりも,低い賃料を毎月支払うだけで,更新料支払い前に退去をするのであるから,更新料の支払いをしなくてすみ,当該物件の居住期間の総額支払賃料が月払い賃料一本方式の場合と比べて少なくてすむというメリットがある。
▼(4)
加えて,企業,団体の社宅や生活保護での住宅扶助などで,更新料に対して補助がなされている場合が世の中には多数存在する。その場合は,月払い賃料の負担者は借主であるが,更新料の負担者は企業,団体,国等の更新料の補助をしている者であり,月額賃料と更新料では負担者が異なっている。この場合は,借主にとっては,更新料は補助金により自己負担せずに済むか,あるいは一部しか負担しなくて済むのであり,まさに月払い賃料一本方式と比べて低額の家賃を負担するだけであり,多大なメリットがある。
●6
以上のとおり,更新料を月払い賃料と併用する更新料併用方式の家賃支払い方式にも,一定の合理性があり,社会の多様なニーズに応えるものであり,私的自治や契約自由の原則から,更新料併用方式の家賃支払い方式も認められるべきである。
更新料は,低く設定された月払い賃料と併用されることにより,月払い賃料の補充としての性質を有するものであり,法的には民法601条の賃料の法的性格の側面を有すると言うべきである。また,更新時に支払われるもので,更新後の賃貸借関係を安定させる更新の地位確保及び更新の地位強化の対価たる側面も有するものであある。
従って,更新料条項は,民法の規定に根拠を有し,対価性もあり,民法の規定の適用による場合に比して消費者の権利の制限又は義務の加重ではなく,消費者契約法10条の前段要件には該当しないと言うべきである。またそのことは,前述の学納金の最高裁判例によっても支持されるものである。


第六 消費者契約法10条後段要件について
●1
消費者契約法10条の後段要件は,「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」と定めている。
後段要件については,原告も認めるとおり,その場合とは,事業者の反対利益を考慮してもなお消費者と事業者との間の情報格差,交渉力の格差の是正を図ることが必要であると認められる場合を意味すると解されている。具体的には,当該契約条項によって消費者が受ける不利益と,その条項を無効とすることによって事業者が受ける不利益を衡量し,両者が均衡を失していると認められる場合を意味すると解されている。

●2
注意しなければならないのは,消費者契約法10条後段要件は,原告が準備書面で主張する更新料条項の不合理性という要件ではないということである。原告は,当該契約条項に合理性が少しでもかけていれば,それは即ち消費者契約法10条の後段要件に該当するかのような主張を展開しているが,消費者契約法10条後段要件は,「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」であり,当該契約条項の不合理性ではない。つまり,多少なりとも合理性が欠けるところが仮にあったとしても,民法第1条第2項に反して消費者の利益を一方的に害するものでなければ,消費者契約法10条後段要件には該当せず,同条違反ではないということに注意しなければならない。消費者契約法10条は,当該条項の完全な合理性までは要求していない。

●3
更新料条項を無効にすることによって,事業者が受ける不利益は,契約書で約定合意された更新料が更新時に支払われないか,あるいはすでに支払われた更新料を返還しなければならないことである。本件は更新料返還請求の事案なので,被告は更新料条項を無効とされることによって,過去に徴収された消費者契約法施行以降に受領した更新料5回分50万円を返還しなければならない不利益を被ることになる。このことは,被告は原告に対し,本件建物を賃貸して使用収益させているのに,約定,受領した賃料の補充たる更新料を過去に遡って返還することにより,月払い賃料しか取得できず,その補充部分たる更新料部分を取得・確保できないということを意味する。即ち,被告は,約定した月払い賃料及び更新料という賃料の補充部分の合計金額のうち,一部の月払い賃料部分しか取得・確保できないことになり,約定した収入の減収という不利益を被る。
●4
被告は,受領した更新料について,すでに税務申告も済ませており,その部分の税金を支払っている。また自己の収入として各種経費に使用している。被告は,本件更新料条項が無効とされることにより,継続的賃貸借関係が過去に遡及して一部覆滅せしめられることにより,不測の不利益を受けることになる。
●5
他方,消費者たる原告の不利益はない。原告はもともと借主として更新料条項を承諾して賃貸借契約を締結し,月払い賃料及び更新料を支払い,本件建物を使用収益しているものであって,賃料及び更新料の支払いと本件建物の使用収益には対価性がある。原告は,もともと更新料併用方式の賃料支払方式を承諾している者である。原告は,月払い賃料のほかに,更新時に更新料を支払うことの条件提示を受け,そのことを承諾し,それらを支払うことを前提に入居をしている。
従って,原告は,本件更新料条項を有効とされたとしても,本来支払わなければならない月払い約定賃料の補充部分を更新料として支払うだけのことであり,特段原告としては不利益を被らない。
●6
加えて,原告は,更新料を支払うことにより,月払い賃料を月払い賃料一本方式の賃料よりも低く設定を受けているのであって,本契約条項が消費者契約法10条違反で無効とされると,いわば,更新料条項合意時には原告が予期していなかった,「いいとこ取り」「タダ乗り」「たなぼた利益」を得ることになるのであり,むしろ不当な利益を得ると評すべきものである。
●7
さらに原告は,契約書21条の合意更新をしたことにより,以後1年間については,解約申し入れを受けることがなくなるのであり,解約申し入れという危険そのものを除去できる地位を確保している。
本件建物を含む全体建物は,昭和58年1月31日に新築された物件であり,改築,建替,あるいは賃貸人の自己使用も考えられる物件である。それについて,合意更新後は,法定更新と異なり,被告は原告に対し,1年間正当事由による解約申し入れそのものができなくなるのであり,更新の地位強化がされることは間違いない。
従って,原告は,月払い賃料の補充たる更新料の支払い条項を有効とされても,原告は,更新料条項により更新の地位強化という利益を有しているのであり,更新料の支払いそのものは支出として不利益だとしても,対価性のある有益な支出と言うべきである。
●8
原告は,乙1号証の15条3項を捉えて,合意更新といえども,解約申し入れできる条項があると主張するが,同条項は合理的意思解釈をすれば,法定更新の場合について解約申入期間を確認的に定めた条項に過ぎないものであり,合意更新の場合には適用がない条項であって,その主張は失当である。15条3項は,賃貸借契約終了条項として一般的に見受けられる規定であり,通例借主からは,借地借家法違反で無効と主張される条項である。従って,借地借家法違反でないとしても,少なくとも上記のとおり合理的意思解釈するのが正しい解釈である。
●9
以上のとおり,本件更新料条項について有効とした場合の原告の不利益及び無効とした場合の被告の不利益を比較衡量すると,両者が均衡を失しているとは言えない。原告には賃料の支払義務がもともと存するのであり,それが更新料併用方式という賃料の支払方法に過ぎないもので,本件更新料条項を有効としても,特段不利益は生じない。それどころか,本件更新料条項による更新料支払いにより,解約申し入れを更新後の期間受けることがない地位を獲得しているのであり,更新の地位強化のメリットも受けている。他方,本件更新料条項を無効とした場合には,賃貸人たる被告は,賃貸借契約締結により収入として計算した更新料という賃料の補充部分を失うことにより,条件設定した収入を,契約は守られるという合理的期待に反して得られないという重大不利益を被ることになる。また,遡及的に賃貸借の収支関係を覆滅せしめられることになり不測の不利益を被ることになる。
●10
現在の建物賃貸借関係は,空室率が京都でも10%を大きく超えていると言われ,しかも貸主は,地震,火災,有害物質,犯罪,自殺,債務不履行等々の様々なリスクを抱えている。その中で,約定された賃料の補充部分が更新料条項の無効により取得できないのは,いわば事後的,遡及的に「踏み倒し」にあって予定した収入部分が欠けることになり,貸家賃貸経営そのものが成り立たなくなる事態に追い込まれかねない。建物賃貸借における貸主のリスクは,借主のリスクよりはるかに経済的に大きいものであることが認識され,そのうえでの両者の不利益の比較衡量がなされるべきである。
●11
以上,本件更新料条項を有効とした場合の借主の不利益と同条項を無効とした場合の貸主の不利益を比較衡量すれば,本件更新料条項は消費者の利益を一方的に害することに該当する条項ではないことは明らかであり,この点からも消費者契約法10条に違反しない。


第七 原告の主張に対する反論
●1
原告準備書面は,一見すると精緻な準備書面として記述されているが,詳細に見てみると理由なきものであり,またいわれなき批判の部分が多々存在する。原告準備書面の更新料に関するいくつかの記述に対して,次のとおり反論する。

●2
▼(1)
原告は次のとおり最高裁判決(平成17.12.16判決)を引用する。
「賃借人は,賃貸借契約が終了した場合には,賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ,賃貸借契約は,賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり,賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ,建物の賃貸借においては,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行われている。そうすると,建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,少なくとも,賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に記載されているか,仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としてものと認められるなど,その旨の特約(以下「通常損耗補修特約」という。)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」との判決部分について,原告は,「結局は(最高裁は)特約の不当性故に意思解釈において特別な解釈を行っている」と主張している。
▼(2)
しかしながら,この最高裁判決は率直に読むと,賃料以外に賃貸借から生ずる通常損耗について原状回復特約を合意することは有効であることを前提とするものである。その有効性を前提に,その特約を約定するには,賃借人に予期しない特別な負担を課すことになるため,
[1] 賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に記載されている

[2] 仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には,賃貸人が口頭により説明し,賃借人がその旨を明確に認識し,それを合意の内容としてものと認められる

ことが必要と述べているものである。
▼(3)
結局,最高裁判決は,原状回復特約自体は不当とも無効とも言っておらず,その特約認定のための条件を述べているに過ぎないものである。従って,この最高裁判決をもって,原状回復特約の不当性が認められたものとの原告の評価は,この最高裁判決の客観的評価とは言い難いものである。この最高裁判決は,原状回復特約の有効性そのものは認めている判決であり,上記①又は②の条件が満たされれば,原状回復特約(通常損耗補修特約)は有効であると判示した判決と評価すべきである。最高裁は,原状回復特約(通常損耗補修特約)そのものを有効として肯定していることに注目すべきである。
●3
原告は,更新料は貸主にとって大きな利益になり,その実現は借主との地位の不平等性からくる交渉力の格差であると主張する。
▼(1)
しかし,借家更新料条項は,昭和40年代から,日本全国各地で現在に至るまで合意されてきている条項であり,貸主だけの大きな利益であれば,40年間以上も継続合意されるはずのない条項である。更新料物件は,月払い賃料を低く設定されているのであり,貸主にとって月払い賃料が低い部分は不利益となっており,貸主の利益のみになるものではない。
▼(2)
また,現在は戦後の住宅不足の時代とは違い,ストックの時代となり,全国的に貸家物件は10%以上余っており(乙18,19号証),借主優位の現象が生じている。京都でも,場所によっては30%以上空室のマンション・アパートが存在している。
貸主は,現在においては市場原理によって制約されているのであり,不合理な条件を提示すれば市場によって拒否され,空家を抱える状況にある。

▼(3)
更新料条件のない物件も現在においては多数存在する。正確な統計がないのでわからないが,京都でも更新料条件のない物件も半数程度は存在すると推測される。インターネットを見れば,更新料がないことを売りにしている物件案内も存在している。
▼(4)
賃借物件情報は,情報誌・新聞・パンフレット・店頭広告・チラシ・インターネット等で,消費者は容易に手に入れることができる。他の物件との比較も容易にできる状況となっている。
▼(5)
現在においては,借主は,選択する時間と労力をかければ,自分にあった賃借条件の賃借物件を見つけることが容易になっている。更新料条件のない物件を選択することも可能である。

▼(6)
更新料が,その交渉力・情報力の格差により貸主に押し付けられているとの原告の主張は,現在の賃貸状況の実情を正確に把握しない机上の議論であり,失当である。
●4
▼(1)
原告は,管理会社が儲けるために更新料を推進し,本件でも管理会社が支援に来ていると批判するが,そのような評価は事実に反しており,また管理会社を悪と決めつけるもので,失当である。
▼(2)
すでに詳述したように,更新料は賃料支払方式の一方式であり,更新料併用の賃料支払方式とでも評すべきものである。即ち,借主においても,合意した更新料は月額賃料と同じく貸主に対し支払わなければならないとの認識のもとに合意されているものであり,まさに賃料の補充である。更新料は貸主の賃料収入を補充するものであり,貸主の収入であって,管理会社の収入ではない。
▼(3)
契約当事者は貸主であって,管理会社ではない。貸主が最終的には契約条件を決定し,その収益から管理会社に管理料が支払われるに過ぎない。家主は管理会社に管理料を支払うのは,管理を委託しているので当然のことであり,更新料も家主の収入であるのであるから更新料から管理料が支払われる場合もあり得ることである。管理料は毎月々更新料条項の有無に関わらず払わなければならないのであり,更新料との直接の相関関係は存在しない。
▼(4)
貸家経営は,複雑専門化した現代社会にあっては管理会社による管理を必要としている。管理会社は現代的な賃貸借関係では,アメリカ等の例をみるまでもなく社会的に必要とされる存在である。管理の仕事は,物件の維持補修をし,専門的かつ継続的な業務であり,しかも対人関係をこなさなければならず,クレームも多い,骨の折れる仕事である。一般貸主では,契約の締結,物件のメンテナンス,修繕,クレーム処理,家賃等の回収,退去処理,どれをとっても実施困難である。管理会社は,貸主から委託を受け,貸主の業務を補助するものであって,問題が生じた場合,貸主を支援するのはその当然の業務である。本件訴訟において,貸主だけでなく,管理会社社員もその傍聴に来ているのはごく自然のことである。
●5
原告は,「賃料補充説は合意更新の場合にのみ更新料が支払われ,法定更新の場合に更新料は支払われないことについて,全く説明ができないという点からもその不合理性が明らかである」と主張する。
▼(1)
しかしながら,更新料条項は,更新料が賃料の補充の性質を有するものであるから,合意更新の場合だけでなく,法定更新の場合も支払われるべきことは論を待たず,明らかである。
▼(2)
実際には,用いられてきた更新料条項について,明確な文言で記載されているものばかりではなく不明確な文言なものもあったため,文言上不明確な更新料条項の意思解釈がなされた結果,法定更新について更新料支払義務が否定された判例がいくつか出されているのが実情である。従って,一部に法定更新の場合は更新料支払義務がないかのような主張が見られるが,それはあくまでも更新料条項の文言上の問題に過ぎない。現在の更新料特約は文言上も明確化され,次のような文言になっているのが通例である。
「借主は貸主に対し,法定更新・合意更新を問わず,賃貸借契約開始の日から○年経過毎に,更新料として更新直前賃料の○ヶ月分を支払う。」
従って,現在用いられている上記条項からすれば,法定更新の場合も,更新料支払義務は明確に規定されており,法定更新の場合も支払義務はある。
▼(3)
更新料には賃料の補充の側面があり,このことは法定更新,合意更新の場合でも同じであり,この観点からも法定更新の場合にも更新料支払義務が存在すると言える。
▼(4)
従って,原告のこの部分の批判は,法定更新の場合に更新料支払い義務が存在しないとの誤った前提に基づいており失当である。
●6
原告は,全国的には借家契約における更新料は例外的であると主張している。
すでに述べたとおりであるが,更新料支払合意は,人口が集中している関東圏で広く行われているほか,北海道,長野,愛知,京都,福岡,沖縄でも行われている。契約の数からすれば,人口の多い大都市圏で更新料支払合意が行われていることからすれば,かなりの数にのぼることは事実である。仮に,更新料条項が全借家数の10%で行われているとすれば,全借家数は約900万件以上あると言われているので約90万件の契約者数になるし,20%であれれば約180万件の契約者数になる。更新料は例外的という指摘は,更新料条項の実数の把握を明らかに間違っており,失当である
●7
また,原告は更新料が社会的承認を得ていないと主張しているが,昭和40年代から現在に至るまでの間で,生活保護による住宅扶助で更新料補助が認められている点,法の番人たる裁判所での和解や調停の場で更新料条項が活用されている点,公証人役場での公正証書作成等で更新料条項が活用されている点については全く沈黙している。これらの点は,まさに社会的承認の証左であり,原告の更新料が社会的承認を得ていないとの主張は,これまた失当である。原告の主張する更新料を支払った後の返還請求こそ,承諾して支払った正当な代価を事が済んだ後に返還請求するもので,良識ある社会の人々からは社会的支持を得られていない事項である。
●8
原告は,国土交通省の標準契約書でも更新料はないとの主張をしている。
国土交通省の標準契約書は一つの契約書の標準を示すものである。これは,国土交通省が特約条項をすべて標準化することはしていないだけのことである。更新料は前述のとおり,すべての物件について採用されているものではないので,標準化に取り上げられていないことも異とするに値しない。
●9
原告は,旧公庫物件について更新料が規制されていることを主張している。
しかし,旧公庫物件では,旧公庫物件が公的資金を使用して建築されることから,住宅金融公庫法で規制がなされていたものであって,旧公庫物件の規制は,公的資金を投入する観点からの規制であった。本件は旧公庫物件ではなく,公的資金の規制を旧公庫融資対象物件以外にも及ぼすべきとの原告の主張は,旧公庫物件も一般物件も何もかもを混同主張するもので,全くの論点外の指摘である。
●10
原告は,更新料は広告において表示されていないと主張する。
広告表示にない例も見受けられるが,そのような仲介業者は現代の厳しい不動産業者間の競争の中で淘汰されてきている。最近では,募集段階から賃貸物件の案内パンフレット,情報誌などの物件案内に更新料が明記されているものも多く見受けられる。なかには,物件案内に更新料表示がないものも見受けられるが,契約締結前の重要事項説明では契約当事者に必ず説明されている。即ち,宅地建物取引業法35条1項6号では,宅地建物取引業者に対して,更新料については説明を義務付けている。そのため,建物賃貸借においては,ほとんどの場合において,宅地建物取引業者の仲介がなされるため,更新料が契約締結前に義務的説明されている。本件においても,乙7号証において,更新料10万円の説明がなされているのであり,原告もその説明を受け,本件建物賃貸借契約を締結している。
●11
原告は,更新料の徴求は,あまりに欺瞞的であり,詐欺的であり,脱法的であると主張する。
現在の賃貸借において,更新料の設定物件については,更新料についてできるだけ詳しく広告表示がなされるようになってきている。仮に,広告がなされていない場合があるにしても,上記のとおり契約締結前の仲介業者による重要事項説明では必ず更新料の説明がなされている。借家において,昭和40年代から用いられている更新料条項において,その意味がわからないとする人は存在しない。誰もが更新料条項があると言われれば,更新時に更新料という一時金を支払う約定であることは理解しているものである。そのことは,契約前に申込者に告知されているのであるから,申込者としては賃借期間を考え,更新することが予想される場合は,月額賃料と更新料を合計して実質的負担を計算し,賃借の有無を決することにしている。そのことは,どの申込者も行っていることである。更新料が契約前に借主に一切告知されない場合なら,詐欺的,欺瞞的,脱法的と評価される場合があり得るけれども,更新料は重要事項説明対象事項及び契約条件の一つとして契約前に必ず借主に告知されているのであるから,そのような批判は失当である。


第八 本件訴訟の不当性
●1
本件訴訟は,契約締結時及び契約更新時に合意して支払った更新料約束についての,いわば事後的,遡及的踏み倒しとでも評すべき訴訟である。
▼(1)
原告は,本件賃貸借契約締結前に重要事項説明において更新料として更新1年毎に10万円の支払いが必要となる旨説明を受けている。そのうえで,更新料支払いを承諾のうえ,本件賃貸借契約を締結している。
▼(2)
また原告は,更新毎に更新料10万円の記載のある契約更新証書に署名・捺印をし,10万円の更新料支払義務を認めている。さらに原告は,更新毎に平成13年から平成17年の更新時にあたって10万円ずつ5回にわたって合計50万円を,何ら異議を述べることなく支払っている。
▼(3)
原告は,平成18年11月分の賃料1ヶ月分を未払いのまま平成18年11月30日退去し,その未払い賃料を管理会社から請求され,その支払いを免れるため,既払分の更新料50万円全額の返還請求をするに至っている。原告自身は,退去後,滞納賃料の請求を受けるまでは,本件既払い更新料50万円については納得し,異議なく支払ってきたもので,原告に対しても管理会社に対しても,一切返還請求をしていない。原告の更新料返還請求は,まさに自己の滞納賃料の支払請求を免れるための苦し紛れの方便としてもともと始まっているもので,正当な主張ではない。
▼(4)
原告は,契約時においても更新時においても,更新料支払合意をすることにより,更新料支払いをすることについて被告に信頼を与えている。それにもかかわらず,退去後返還請求をするに至っているものであり,原告との約束及び信頼を一方的に裏切っているものであって,信頼関係が必要とされる賃貸借関係当事者として許されるべき態度ではない。


第九 まとめ
●1
現在的状況下では,居住用建物賃貸借の分野は,本来的に消費者契約法の適用になじむ分野ではない。
▼(1)
現在は,住宅不足であり,インターネット・情報誌等での情報獲得手段の乏しかった時代とは,貸主・借主間の情報力・交渉力の関係は全く異なっている。消費者契約法を適用すべき情報力・交渉力の格差は,貸主・借主間においてはもはや存在していない。経済成長,耐久性建物の増加等により借家が過剰に供給され,他方少子化人口減少社会により,借家需要はむしろ減少傾向にあり,空家率は全国平均10%を超えている。
▼(2)
また,貸主に対する規制は,建築基準法,宅建業法その他の法改正により年々強化されてきてきる。貸主は,借主に対し賃貸市場で通常行われている条件設定から逸脱した条件設定をすれば,たちまち空家の増加に悩まされることになっている。特に京都においては,零細な個人貸主も多く,もともと貸主の力が借主よりも強いとは必ずしも言えない状況にある。
▼(3)
他方,借主は現在的状況下では,賃貸借に関する情報をインターネット・情報誌等で短時間に簡単・容易に大量に入手することができるようになっている。借主は,賃貸借情報を収集し,物件相互間の比較を容易に行うことができ,また自己に適した物件を選択できる状況にある。
▼(4)
このように,事業者たる貸主と消費者たる借主との間での情報力・交渉力の格差が乏しいか,あるいは場合によっては逆転している現在の建物賃貸借の分野においては,消費者契約法の拡大適用がなされてはならないし,ましてや更新料条項に消費者契約法10条が適用されてはならない。
▼(5)
建物賃貸借分野での契約条件の規制は,取引の安全等から基本的に市場(マーケット)に委ねられるべきであり,裁判所が事後的に過剰介入してはならない。消費者契約法10条を適用して更新料条項を無効とすることは,契約当事者の自己責任の否定かつ私的自治・契約自由の原則の否定であり,取引の安全を害することになり,認められてはならない。
●2
▼(1)
更新料は昭和40年代から,現在にわたり継続的に都市部を中心に全国的に,しかも民間の当事者だけでなく行政機関,司法機関によっても承認されてきた契約条項,制度である。更新料は,賃料の補充,更新の地位確保又は更新の地位強化の対価としての性格を有するもので,適法・正当な金員である。
▼(2)
更新料については,貸主・借主ともその更新料支払合意時に,借主が更新時に賃借物件を使用継続するために支払わなければならない一時金として共通に認識し,合意している。また,借主は,賃借物件を決定するにあたって,月払い賃料だけでなく更新料も考慮して賃貸条件が自分に適合するかどうかを決定している。従って,更新料は詐欺的,脱法的,欺瞞的金員ではなく,正当な金員である。
▼(3)
更新料は公序良俗に違反しないことは,社会的承認を受けてきたことからして明らかである。
▼(4)
また,消費者契約法が平成13年4月1日施行されているが,更新料条項の消費者契約法10条の該当性については,更新料条項が民法等よりも消費者の権利を制限し義務を加重するものでもなく,また信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものでないから,同条の前段要件,後段要件のいずれにも該当せず,同条違反ではない。
●3
▼(1)
本件訴訟は,原告が,被告との契約上の約束を一方的に裏切り,自己の利益実現のために消費者契約法の拡大適用を主張し,異議なくすでに支払った過去5回分,5年分の更新料の返還請求に及んでいるものであり,契約当事者の信義に反する訴訟でもある。
▼(2)
本件訴訟での原告の請求は,その請求内容・動機・目的・手段においても失当であり,その観点からも絶対に認められてはならない。原告の請求は,良識ある裁判所により不当請求として全面的に棄却されるべきである。

以上

※更新料問題を考える会ブログより
まとめ記事はこちら

平成19年(ワ)第1793号 更新料返還等請求事件 平成19年11月16日 第3回法廷

原告弁論要旨

第1 はじめに
●1
建物賃貸借契約における更新料支払い条項は,消費者契約法ないし公序良俗に反し,無効である。今回提出の原告準備書面では,消費者契約法の趣旨,建物賃貸借契約における不当条項排除の経緯,更新料の発生起源・経緯,更新料の不当性・不合理性を述べ,あわせて被告準備書面についても反論を行った上,更新料支払条項の消費者契約法10条該当性,公序良俗違反について述べる。

●2
なお,先に1点,被告は「行き過ぎた消費者運動」と主張するが,不当な条項を無効とすることは時代の要請であり,本件原告の主張も消費者の利益擁護という時代の要請に沿ったものである。この「行き過ぎ」論は,原状回復条項の不当性が争われた事件でも,事業者から主張されたが,原状回復条項は,消費者契約法により無効との結論が出されている。

第2 消費者契約法の趣旨と不当条項の判断について
●1

そもそも,消費者契約法1条は,事業者と消費者の交渉力の格差の存在を社会的事実として認め,この格差から消費者利益を不当に害する契約条項を無効とすることを宣言している。
すなわち,契約当事者が契約条項を理解して契約したとしても,契約条項自体に客観的な不当性がある場合には,消費者契約法上無効な条項となる。守るべき契約と言えるかどうかが,消費者契約法上,問題になるのである。
●2
そして裁判所は,この点について積極的に審査を行い,不当条項の無効を宣言すべきである。
消費者契約法10条は,消費者に不当な不利益な条項を無効とする旨を規定するが,不当条項の具体的内容を規定していない。
従って,裁判所は問題となっている契約条項が消費者契約法10条における不当条項に該当するか否かを積極的に審査し,不当条項は無効であると宣言することによって,消費者保護の重要な役割を果たす義務がある。

第3 建物賃貸借契約条項において不当条項が無効とされてきた
裁判例の流れ
●1

建物賃貸借においては,従前から,不当条項が用いられ,その時代時代において,解釈,消費者契約法10条違反,公序良俗違反などにより,その不当条項の効力が否定されてきた。
本件で問題となっている更新料条項は,建物賃貸借において,まさにその効力を否定すべき不当条項の問題の一環である。
●2
裁判例で不当条項とされてきたものとして,まず,賃借人に退去時に自然損耗を含む原状回復を要求したり,賃料に原状回復費用は含まれないなどとする原状回復条項がある。原状回復条項については,最高裁判決が,不当な原状回復条項の効力を意思解釈のレベルで否定した。もっとも,この意思解釈も,結局は特約の不当性故に行われたものであるといえよう。
また,大阪高裁判決も,不当な原状回復条項を消費者契約法10条によって無効であると判示している。
●3
さらに,敷引特約についても,神戸地裁,大津地裁,京都地裁,大阪地裁,最近奈良簡裁でもだされたようであるが,それぞれの裁判所において,消費者契約法10条により無効とされ,関西地域における裁判実務において,敷引特約は無効であることが定着したといえる状況にある。
●4
事業者と消費者の情報・交渉力の格差から不当な契約条項を無効とする消費者契約法の下では,更新料支払条項も,原状回復条項,敷引条項などと同様,従前から建物賃貸借契約に蔓延している不当条項なのであり,その不当性故に消費者契約法10条により無効と宣言されなければならない。


第4 更新料条項の不合理性
●1 更新料とは

更新料という概念は,法律にはなく不動産賃貸借契約実務の中で発生したものである。したがって,その定義も「賃借権の存続期間が満了した場合に,契約の更新に際し授受される金銭」という程度のもので,法的性格を含んで定義づけられることはない。
借地借家法は,法定更新を認めていることから,更新料の徴求は予定していない。ところが,私的自治,契約自由の原則の名の下,更新料条項は有効だという前提で,賃借人から賃貸人は更新料を徴求してきたのである。
本件では,この更新料条項が不当条項ではないのかを問う裁判である。
●2 更新料支払条項の実際
更新料の発生経緯について,必ずしも明らかではない。借地更新料については,地価が高騰を始めた昭和30年ころから,東京地方でその授受が急速に広まったといわれている。

このように,昭和30年ころに更新料が発生したのは,地価の高騰が賃料に反映されていないため賃料の値上げをしたかった賃貸人が法律上の手続きである賃料増額請求権があるにもかかわらず,その手続きをとることなく更新料という名目で金銭を受け取ることによって脱法的に賃料の値上げを図ったことが原因である。これは,更新料の徴求がなされている地域が東京など地価が高騰していた地域に集中していることと合致する。

このようなあいまいな更新料が一部地域で行われているには,貸主にとって,大きな利益になるからであるし,その実現は借主との地位の不平等性からくる交渉力の格差にあることは言うまでもない。

さらに無視出来ないのは,不動産管理業者の存在である。管理業者が入ることで賃貸人と賃借人の人的関係が希薄になり更新料の請求がしやすくなること,契約期間も1年や2年など短期に設定することで契約更新の回数も増えることから更新料を取ることが事業として採算の取れるものになったため管理業者が自己の利益のために積極的に更新料の導入を進めたという背景がある。管理業者においては,仲介手数料は,宅地建物取引業法における規制があるのに比べ,更新料についてはそれがないため,貸主との関係で自由に決めることが出来るメリットがある。
これに対し,賃借人側には何のメリットもない。

学説においても,更新料の法的性質について厳密に検討した学説では,更新料の中でも特に建物賃貸借における更新料支払義務については経済的,法的根拠がないとしてその効力を否定する学説があった。民法学の権威である星野英一東京大学名誉教授も「合意といっても,実際は,家主の圧力によって借家人が事実上承認せざるを得ないのである。借地と異なり,借家の期間は短期であるから,果たしてそれらに借地におけるような合理性があるかは,かなり疑問である。」とした上で,「更新料も,借家が短期であることから,あまり合理性がない。従って,借地におけると異なり,合意で更新されたときに,家主は更新料の請求権がないと解するのが妥当である。」として,建物賃貸借における更新料支払条項の効力を否定している。

更新料の法的性質論としてこれまで議論されてきた,
・1 賃料の補充説
・2 異議権放棄の対価説
・3 賃借権強化の対価説
などは,もともと脱法行為を目的として発生し,何ら経済的,法的根拠のない更新料の有効性を理屈づけようとしてひねり出された後付けの理由にすぎないのである。

また,従前の更新料の性質論における議論にとしては,契約条項にあることから何らかの合理性を与えようとする観点のものが多くあり,消費者契約法が制定された観点からみた不当条項に該当するか否かの視点・議論は全くなされていない点は注意しなければならない。消費者契約法が制定された現在においては,更新料支払条項は,従前の更新料無効説が指摘するとおり,その不合理性故に無効というべきである。
●3
更新料の法的性質について,被告は
・1 賃料の補充
・2 異議権放棄の対価
・3 賃借権強化の対価
という複合的性質を有すると主張するが,いずれも何ら合理性はない。

▼(1)
まず,
・1 賃料の補充説
については,賃料補充の合理性を裏付ける前提自体が存在しないこと,1年や2年の短期間の契約において賃料の不足分が生じることは考えにくいこと,期間の長短を一切考慮せずに一定金額で算定していることの説明がつかないこと,賃料の不足が生じた場合には賃料増額請求による補充が可能であること,法定更新の場合に更新料が支払われないことの説明がつかないことからして合理性がないのは明らかである。
被告は,賃貸人としては「権利金」・「礼金」・「更新料」なども含めた全体の収支計算を行ったうえで毎月の賃料額を設定するのが当然であるから,設定賃料と本来受ける経済賃料との差額を更新料による補充することは合理性があると主張しているが,賃貸人が被告主張の収支計算の下に賃料設定を行ったとしても,それは賃貸人の勝手な皮算用であり,更新料が賃料補充の性質を有することの合理性が認められることにはならない。

▼(2)
また,
  ・2 異議権放棄の対価説
について,被告は,更新料が異議権放棄の対価であるとか異議権行使に伴う紛争を回避することを目的とするものであると主張するが,そもそも異議権が発生するか否かにかかわらず,一律に更新料が徴収されていることの説明がつかないし,異議権の行使時期と更新料の支払時期との時間的先後関係を全く無視している。すなわち,通常更新料は,賃貸借契約期間満了のころに当事者間で合意更新をすることによって支払われるものであるところ,借地借家法上,賃貸人の異議権は期間満了の6ヶ月前までに行使しなければならない。したがって,通常合意更新がされる場合というのは,既に賃貸人による異議権行使の期間が徒過しており,異議権が発生しないことが確定している場合がほとんどなのである,したがって,もはや異議権の放棄とか異議権行使に伴う紛争回避ということは全く問題となる余地はないのである。
▼(3)
さらに,
  ・3 賃借権強化の対価説
について,被告は,同旨の判決として東京地裁平成17年10月26日判決を挙げる。しかしながら,本件賃貸借契約においては,賃借人が更新料を支払って賃貸借契約を更新したとしても,第15条3項において,賃貸人が6ヶ月前に通知することによって賃貸借契約を解約することが認められているから,賃借権強化の対価ということは,少なくとも本件更新料には当てはまらない。
そもそも本件のような賃貸用のアパートやマンション(収益物件)の賃貸借契約で,かつ更新期間が1~2年といった極めて短期間での更新が定められている賃貸借契約においては,仮に法定更新がなされ期間の定めのない賃貸借契約となった場合でも賃貸人の正当事由に基づく解約が認められるケースはほとんどない。

とくにこれが更新期間が1~2年といった短期の賃貸借契約の場合には,その実益はゼロに等しい。1年更新の契約を例にとれば,仮にこの契約が法定更新された場合に,その後わずか半年の間に解約申入れの正当事由が発生するなどいうことは現実的にはほとんど有り得ない。

したがって,更新期間が1~2年といった短期の賃貸借契約の場合には,合意更新によって賃借権を確保するという実質的な意味は全く認められず,更新料の支払に賃借権強化の対価という性質が含まれると考えることは,明らかに契約当事者の合理的意思に反する。

なお,被告が引用する前記東京地裁平成17年10月26日判決の事例は,更新期間が2年で,更新料が賃料1ヶ月分とされていた事案であり,同判決は,「本件更新特約に定める更新料の金額が1か月分の賃料相当額とされている点にかんがみて」更新特約が消費者契約法等に反しないと判断しているところ,その判断自体も不当であるが,本件では,更新期間1年で,更新料が月額賃料の2.22倍にも及ぶのである。
▼(4)
以上より,被告が主張する更新料の法的性質は,いずれも,契約当事者の意思に反し,全く合理性がない。

更新料は,賃貸人が,情報力や交渉力の格差を利用して,賃借人に十分な法律知識がないことを奇貨として,法律上根拠のない異議事由や解約事由をちらつかせることによって,半ば強制的に徴収している金銭と言っても過言ではないのである。
この点,神戸地判平成17年7月14日は,「賃借人のみが賃貸借契約の更新料を負担しなければならない正当な理由を見いだすことはでき」ないと判示している。
●4 その他の更新料の不合理性
▼(1)
全国的には借家契約における更新料は例外的で,東京周辺と京都程度で徴収されているにすぎない。決して社会的な承認を得ているものではない。

▼(2)
国土交通省が推奨する賃貸住宅標準契約書においても,貸主が更新料を取得する旨の規定は置かれていないし,実際,公営住宅では更新料はとられていない。
▼(3)
公庫物件では,更新料は不当な負担で,その請求は犯罪行為であった。
▼(4)
更新料は,賃貸契約の広告において表示されていない。負担の具体的内容な存否を秘して,割安感を与えた上で消費者を勧誘する方法は詐欺的ですらあり,不当極まりないものである。
▼(5)
更新期間が1年や2年の賃貸借契約の場合,法定更新と合意更新との間には何ら実質的な差異がないにも関わらず,法定更新の場合には更新料を全く支払う必要がないのに対し,合意更新の場合には更新料として月額賃料の1,2ヶ月分といった重い負担を強いられることは明らかに均衡を失している。

●5
以上のとおり,更新料支払条項にはみじんの合理性も見出されないのである。

第5 消費者契約法10条による本件特約の無効について
●1
まず,消費者契約法の立法趣旨からすると,消費者契約法10条は,例え合意が成立していたとしても,消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差にかんがみ,「消費者の利益を一方的に害するもの」は無効とするものであるから,被告が主張するような,「原告,被告の合意によって契約の一部となっているのであるから,その法的性質論としては,一応の合理性が説明できれば(言い換えれば明らかに不合理であって一方的に消費者の利益を害するものでなければ)それで足りる」という理解は誤りである。このことをまず指摘しておく。
●2
既に述べたとおり,更新料支払条項には全く合理性はない。

被告は,更新料が社会的承認を得ていると主張するが,既に述べたとおり,更新料条項は全国的には東京周辺と京都程度の一部地域で行われているにすぎず,しかも,賃貸人や管理業者に押し付けられたものであるから,到底社会的承認があるとはいえない。また,広く行われていれば,有効となるものではない。この点は,大学の学納金を返還しないことが広く行われていたが,消費者契約法で無効とされたことを考えれば明らかである。

被告は,立法者の意思として借地借家法の改正過程を主張するが,本件で問題となるのは借地借家法改正の後の成立した消費者契約法であるから的はずれな主張である。

被告は,情報の格差についても主張している。その内容自体も不当であるが,何より,消費者契約法の趣旨の大きな柱である「交渉力の格差」について,前回準備書面では全く検討されていない。仮に賃借人が,更新料特約を賃貸人契約の条項から削除しようとしても,賃貸人がかかる削除要請に応じなければ,削除することはできない。消費者である賃借人と,事業者である賃貸人との間の圧倒的な交渉力の格差のため,賃借人は賃貸人に対して,更新料特約削除の交渉ができないまま,一方的に同特約を押し付けられてきているというのが実情なのである。被告が主張しなかったか,できなかった,この「交渉力の格差」を考えれば,押しつけられた更新料支払条項が無効であることは明らかである。
●3
以上のとおり,消費者契約法10条を正確に解釈すれば,マンション,アパート等建物賃貸借契約の更新料支払条項は,消費者契約法10条により無効と判断されるべきである。

第6 公序良俗による無効
以上の更新料支払条項の不当性からすれば,公序良俗によっても無効とされるべきである。

第7 まとめ
本件更新料支払条項は,裁判所によって無効と宣言されるべき条項であり,現状では,裁判所しか,無効とできないものである。1年更新で2ヶ月分の賃料を超えるという極めて不当な本件更新料支払条項について,裁判所が無効と宣言されることを確信しているものである。

※更新料問題を考える会ブログより
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平成19年(ワ)第1793号 更新料返還等請求事件 平成19年8月7日 第1回法廷

意見陳述書 要旨

被告=貸主側(田中伸弁護士陳述)

●1.
本件訴訟での更新料返還請求は、賃貸借契約当事者の信義に反する請求である。原告は、重要事項説明を受け、更新料特約のある契約書に署名・捺印をし、更新料支払いを約束している。また、原告が本件訴訟で返還請求している更新料は、各更新時期にすべて合意更新をして異議なく支払った更新料である。しかるに、原告は、退去後に本件訴訟を提起し、過去5回分の更新料請求に及んでいる。原告は約束を一方的に覆し、支払った更新料金額について、事がすべて済んだ後に本件訴訟を起こしているもので、原告の本件訴訟提起は、道徳・倫理・信義に反している。約束を守るということは社会の最も基本的な原理の一つであって、このような請求が認められることがあってはならない。

●2.
原告は、賃料不払いを免れる手段として更新料返還請求を持ち出している。もともと原告は、各更新時に更新料を異議なく支払っていたが、賃料1ヶ月を未払いのまま、解約申し入れをして本件建物から退去したものである。原告は、1ヶ月分の未払賃料の支払いを管理会社から請求され、その支払いを免れる口実として、更新料返還請求を主張するに至った経過がある。

●3.
更新料の法的性格は、賃料の補充及び更新の地位確保の対価であり、民法に根拠を持つもので、合理性・対価性があり、借主に一方的に不利な金員ではない。原告は、更新料という賃料を被告に支払ってきたものである。

●4.
更新料は古くから社会的に承認されてきたものであり、更新料特約は、昭和30年代・40年代ころから、京都だけでなく、東京、愛知、福岡といったところを中心にほぼ全国的に行われてきた。更新料特約については、社宅を借りている企業も、また行政も、その存在を承認し、更新料について補助をなしてきた。特に生活保護においては、行政が更新料を生活保護の扶助対象として認めてきた経過がある。

●5.
建物賃貸借の分野は、消費者契約法が対象とする交渉力・情報力の格差が生じている分野ではない。交渉力の格差といっても、賃貸住宅は全国平均で10%以上がすでに空室となっている状況で、貸主は借主よりもむしろ弱い立場にある。また貸主は、多額の借入れをして投資をしているが、構造上の強度、アスベスト、犯罪事件、火災・災害の事故等の物件の様々なリスクを抱えており、他方、借主は転居するリスクを負っているにすぎない。貸主の立場は借主よりもリスクにさらされている。情報力の格差に関しても、賃借人に必要な情報は、パンフレット、雑誌、インターネット等で容易に手に入り、借主よりも貸主の情報力が勝っているものではない。建物賃貸借の分野は、交渉力・情報力の格差がある典型的な消費者問題の分野ではなく、消費者契約法の適用が疑問視される領域である。また、零細な個人貸主も多く、本件の原告も零細個人である。更新料特約に消費者契約法10条を適用することは、消費者契約法の拡大適用である。

●6.
更新料特約が消費者契約法10条に違反しないことについては、すでに平成17年東京地裁、平成18年明石簡裁の少なくとも2件の訴訟において、判例として出されている。

●7.
本件訴訟では、原告の訴状における主張で、契約書の記載と異なった保証金の主張がなされている。また、原告が提出している甲1号証にも書き換えの跡がある。原告は、事実関係については正々堂々と主張すべきであり、事実を隠すことや事実でないことを主張すべきではない。本件訴訟においては、両当事者は、事実関係について事実を素直に述べ、裁判所の判断を仰ぐべきである。本件訴訟での更新料特約は消費者契約法等に違反せず、原告の更新料返還請求等は直ちに棄却されるべきである。

※更新料問題を考える会ブログより
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平成19年(ワ)第1793号 更新料返還等請求事件 平成19年8月7日 第1回法廷

原告=借主側(野々山宏弁護士陳述)

●1.
居住用賃貸マンション等の賃貸借契約において、原状回復特約や敷引特約による敷金不返還問題が社会的に問題になるなど、賃貸借契約書の中に数多くの賃借人にとって不利益な条項が存在することが問題になっており、これら賃貸借契約における不当条項を巡っては、消費者契約法施行前においては、判例などで賃借人の保護を図るための様々な制限的な解釈等による救済の努力がなされてきた。

●2.
最高裁平成17年12月16日判決の事例は、消費者契約法の適用のない賃貸借契約における原状回復特約の効力が問題となった事案であるが、判決で、通常損耗についても賃借人の負担によって原状回復すべき旨を定めた特約の成立に極めて厳格な要件を課し、事実上このような特約の成立を否定した。

●3.
消費者契約法施行以降は、原状回復特約や敷引特約が賃借人の利益を一方的に害する不当条項であるとして、消費者契約法10条に違反して無効であるとする判決が続々と出されるに至っている。

●4.
本件訴訟は、更新料条項が消費者契約法10条で無効であるとして、更新料の返還を求めて全国で初めて提起されたものとして、新聞報道でおおきく取り上げられるなど社会的にも注目を集めており、今後の居住用賃貸マンション等の賃貸借契約における契約条項の適正化を図っていく上で極めて重要な意味を持つ訴訟である。したがって、本件訴訟においては、これまで上記判例などによって積み重ねられてきた消費者保護の理念や消費者契約法の趣旨を十分に踏まえた審理、判断がなされる必要がある。

●5.
消費者契約法10条は、消費者契約においては、たとえ契約当事者が合意したものであっても、消費者の利益を一方的に害する条項については、これを無効とすることによって、消費者を保護する趣旨に出たものである。

●6.
更新料の授受は、過去、まだ比較的長期間の一軒家の賃貸借契約が多く見られた時代において、高騰する地価に対応する賃料の補充ないし権利金の補充等の意味を持つものとして始められたと言われている。しかしながら、近時の賃貸借契約を取り巻く状況は、広く居住用賃貸マンションやアパートが普及し、賃貸借期間も比較的短期間に設定され、また必ずしも地価が右肩上がりに上昇するといった経済状況にはないといったように、従前更新料の授受が始められた頃に比べ、その社会状況は大きく変化している。

●7.
したがって、本件では、消費者契約法施行後のそのような社会状況の変化を踏まえ、居住用賃貸マンション等の賃貸借契約において、はたして更新料支払条項に合理性があるか否か、すなわち賃借人が更新料支払の対価として、それに見合う何らかの実質的な利益を受けているか否か、ということが厳格に問われなければならない。

●8.
特に、更新料については、一般に雑誌やインターネットなどの不動産広告における賃貸条件の表示対象とされておらず、契約申込みの段階になって不意打ち的に契約条項に盛り込まれるという実態があると考えられることや、本件事案のように1年間で2か月分以上といった暴利的ともいえる不当に高額な更新料が設定されている事例も見受けられるなど、その弊害は決して少なくない。

●9.
原告としては、本件訴訟において、現在の居住用賃貸マンションにおいては、賃借人にとって更新料支払条項を設けることに何らの合理性はなく、更新料支払条項は賃借人の利益を一方的に害する条項として、消費者契約法により無効であることを明らかにする。

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