同じお客さまから、仲介業者違いの問合せ

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O家さんのファミリー向け物件、「マルシェ北坂」は「一般媒介」で募集をかけています。


「一般媒介」というのは大家さんから直接、多くの不動産屋さんへ情報を流す方式。
これに対して特定の一社に募集業務を依頼するのを、「専任媒介」といいます。


いくつかの不動産屋さんで同じ物件を見かける、というのは時々あることですが、大家さんが直接各業者に依頼している場合と、専任で募集業務を行っている不動産屋さんから情報が流されている場合があるわけです。後者を「流通物件」と呼びます。


さて、「マルシェ北坂」3階に空き室が発生したO家さん。
いつものごとく、不動産屋さんに募集依頼のFAXを送ります。
昔から付き合いのある地元の駅前不動産屋さんもあれば、フランチャイズで名の通ったエ○ブルやミ○ミニなどの大手業者もあり、合計20社ほどに同報送信。


数週間後、A不動産から空室確認の電話がありました。

「マルシェ北坂の303号室、まだ空いてますか?」

「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」

「わかりました。ご案内させていただきます。案内用の鍵はどこにありますか?」

どうやらお客様を内見に連れて行ってもらえるようです。
どうか気にいってもらえますように! と、祈る気持ちのO家さん。

次の日の朝、A不動産から再度電話です。気に入ってもらえなかった場合は、案内以後の連絡がないケースも多く、再度の電話は脈のある証拠。どきどきしながら電話を取ります。

「A不動産です。昨日のお客様なんですが、前向きに考えていただいてまして。もう少し考えたい、ということではあるんですが、お部屋を止めてもらってもいいですか?」

ちょっと嬉しい、でも微妙な連絡でした。
部屋止め、というのは仮押さえと同じ意味でO家さんの地域では使います。
「正式申込はまだだけれど、優先権を確保したいので募集を一時停止してほしい」ということです。多くの場合、
「申込意思はあるけれども、申込書がまだ完成していない」
状態です。
単に

●申込書を書くあいだ止めてほしい

と、いう際にも使われますが、

●お客様が一旦帰宅した後、電話で業者さんに申込意思を伝えてきたので、次の来店時まで部屋を止めてほしい。
●申込たいけれども、保証人候補者とまだ話がついてないので、申込書を完成することができない。
●ここにほぼ決めたけれども、今日来ることができなかった家族の意思を確認したいお客様がいる。

と、いうような時にも使われます。


「申込書はいただけないんですね?」

「ハイ。すみません。でも、お客様がお探しのエリアで猫がOKのところはマルシェしかないんで、ここがなくなるとウチも他に紹介できる部屋がないのです。お客さまも他のエリアに行かないといけなくなるので、決まると思うんですよ」

小学生のいるご家庭だそうで、転校を避けようとするとマルシェ北坂になるのだそうです。

少し考えたあと、O家さんは

「わかりました。止めることはできませんが、他のお客さんから問合せが入ったらすぐに連絡させてもらいます」

と、答えました。昔から土地の売買などでもつきあいのあるA不動産です。
他のお客さんから問合せが入っても、そこよりも先に申し込む機会があるように、気をきかせたつもりでした。

――そこから後は先着順、決断の早いお客様と契約しよう

と、考えながら、O家さんは電話を切りました。
しかしこれが、後から驚きの事態を引き起こすのです。

2日後のことです。
賃貸専業FC系のBエステートから、その「マルシェ北坂303号室」に問合せが入りました。
「がんばってお客さんつけさせてもらいます!」

元気な声が電話口から響きます。
よろしくお願いします、と電話を終えた後、O家さんはA不動産に問合せが入ったことを伝えました。


その後、A不動産がお客様と連絡がとれたのかどうかわかりませんが、Bエステートから

「今から申込書入れさせてもらいます! お部屋止めお願いします!」

と、電話がかかってたのは、その日の夕方でした。

「ありがとうございます。ではお部屋止めさせていただきます」

A不動産には気の毒ですが、これでなにも問題がない限りBエステートのお客様に決まりです。
O家さんはA不動産に、「マルシェ北坂303号室」に申込が入る、と電話しました。
A不動産にはお客様に、残念ながら部屋が決まってしまった旨を伝えてもらわなければなりません。

A不動産の営業マンは

「えっ」

と、一瞬絶句しました。

「わかりました。お客様にお伝えします」

お互いに、「またよろしくお願いします」と電話を終えましたが、無念そうな様子が電話口から伝わってきました。


次の日の朝。

Bエステートから申込書がつかないので、おかしいな、とは思っていたのです。
営業時間のからみだろうか、と確認の電話をいれようとしていたところでした。

なんとBエステートから

「申し訳ありません!」

と電話がかかってきました。

「昨日のお客様なんですが......キャンセルです......」

「えっ」

と、今度はO家さんが絶句しました。
すぐにA不動産に連絡すれば、あのお客様に間に合うだろうか、と思ったときです。
電話の向こうの声は、一瞬、次の台詞を言おうか言うまいか、逡巡したようでした。

「実は、A不動産がお客様にストップをかけまして......」

「えっ」

再びO家さんは絶句しました。

「確かにA不動産からもお問合せが入っていましたが......同じお客様だったんですか??」

「そのようです」


どうやらA不動産から、物件の空きがなくなってしまった、と聞いたお客様。

『その物件、Bエステートから申込むことにしたので』

と答えたのだそうです。
それを聞いたA不動産の営業マンが、

『こちらが先に紹介したのに、それはない! Bエステートと大家さんに抗議する!』

と憤慨し、お客様はBエステートから申込を取り下げたのだとか。

「うちは仕方ないとして、大家さんに抗議ってのはどうかと思うので、A不動産さんからなにか連絡があるかどうかわかりませんが、経緯をお伝えすることにしました」

と、Bエステートの営業マン。紹介したBエステートも、その労が無駄になったわけです。A不動産から既に紹介されてるとは知らずに紹介したのでしょうから、Bエステートも無念でしょう。

「A不動産さんだと、仲介料1ヶ月取るじゃないですか。うちだと0.5ヶ月ですよ、ってお客様には言ったんですけれど......」

と、Bエステートの営業マンはつぶやきました。

「情報を見つけるは難しくない時代になりましたから、後は料金も含めたサービスで選んでもらえればいいと思うんですけどねぇ......」

不動産仲介は情報が商品です。
先に情報を紹介した方がお客様を得、一種の情報料でもある仲介手数料を得る、というのが業界慣習です。
ですから、他の業者から既に紹介されてる物件を、同業他社でリクエストして再度紹介してもらうのは、NGとされています。

今回、Bエステートがどの時点で、紹介がダブったことに気づいたのかはわかりません。

――これでお客様に嫌気がさしてしまわなければいいのだけれど......

とO家さんは危惧しましたが、そのお客様からはA不動産を通じて申し込みが入りました。
空室が埋まったのは嬉しいことですが、ひどく複雑な気分を抱えて、O家さんは入居の用意をすることになりました。

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コメント(2)

こんにちは

確かに、今はWEBで物件検索ができるので、縦断タイプですと条件検索で同じ物件が並びますね。
見る方も、物件名が隠されていても、間取り、広さ、値段で同じ物件を複数が仲介していることを知っていると思います。
たまに、仲介料や礼金が違ってもトータルが同じと気づいたり、仲介が広告料を泣いたか裏で補てんで家主が..などと想像する時もあります。

とは言え、尚更 仲介を選ぶ時には同物件は頼みませんし、それが常識と思いますが、”消費者”は知らない場合もあるのでしょうね。

ならば、同物件が表示される場合には、”同じ物件を複数の業者から仲介することはできませんので、仲介を決めてからお申し込み下さい。”という注意を表示するのは出来ないのでしょうか? 結局は”消費者”を相手にするならば注意しなかった方がいけないという世の中です。 WEB上にそうしたウインドや同意を入れることは技術的にも難しくないし、同じ物件ならば隠しても”消費者”にも判りますの、むしろ隠さない方がお互いのためのように思います。

ただ、今のような下降局面ですと、仲介料の値引き合戦になったり、申し合わせをすれば”不正競争防止法違反”だと言われる危険もあるので、工夫は必要とは思いますが...

外資社員さんのようなお客様だと、お話がしやすいのですが、多くの方は

>”消費者”は知らない場合もあるのでしょうね。

このとおりだと思います。
今回はたまたまお客様が口を滑らせたので発覚しましたが、そもそもそれが「マナー違反」であるという意識もないケースが多いので、水面下ではとても多いような気がします。特に賃貸では。

>、”同じ物件を複数の業者から仲介することはできませんので、仲介を決めてからお申し込み下さい。”という注意を表示するのは出来ないのでしょうか?

同一物件をまとめて表示するサイトは登場しました^^
http://sumaity.com/

ホームズの不動産アーカイブ http://archive.homes.co.jp/
も面白いです。

ここで難しいのは、賃貸といえども本質的には一品ものの相対取り引きなので、表示条件は募集条件であって、そこから三つ巴の交渉があるのは普通のことなんだ、という意識を「消費者」に保ってもらうことかもしれません。


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このブログ記事について

このページは、が2008年11月21日 01:07に書いたブログ記事です。

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