明治36年1月(1903年) 学生自活法

| コメント(0) | トラックバック(0)

明治36年1月 「学生自活法」 緒方流水著 より抜粋

貸間の等別

今左に彼等貧書生の生活の生活の状況を記述すべきが、この両区の中にても最も多きは神田区なれば同区の事にて記さんに、借手は2階を借り居るもの、又は下座敷の明間に生活し居るものもありて一定せず。座敷料は3畳押入付にて2円より2円50銭、4畳半押入付2円50銭より3円位、6畳の間押入と床間付にて3円より4円内外、其他8畳の間に縁側付押入に床間にてもあり二階座敷となれば5円より6円位なれど貧書生にはかかる座敷は借り受け得られず。何となれば生活費に制限ありて座敷料にのみ多額の金を支出せば食糧費に差支えを来すべければなり。以上記したる是れらの座敷は多く普通学生が下宿屋を離れて素人屋住いをなす為に借受るものなるが、何れも大抵完全なる天井裏のある座敷なり。貧書生の需る座敷は其の実、座敷を望むにあらずして雨露を凌ぐ為の座敷なれば如何にむさき座敷にてもいとわざるなり。

下等貸間及貸家

書生に適当する下等の貸間になれば天井もなく押入もなき二階座敷にて5畳半或は7畳と云うが如き不格好のものありて座敷料は2円位なり。天井ありて押入なき6畳間は2円30銭位にして多くは6畳を二つに仕切り3畳間となして貸与す。夫で座敷料1円2-30銭位なるが押入ある時は隣座敷の客と共同なり。押入共同にても余り古びざる畳道具のある所は2円位取らるるなり。又貧書生は人によりて同居を嫌がるものなれば彼等は2-3人乃至3-4人にて一家を借受け共同生活をなすことあり。家賃は台所上り口一所にある裏長屋にて6畳の間一間位の家にて畳建具附かざる家にて3円位。畳建具附きは3円50銭より4円位なり。家を借りるには敷金を要し、家賃の2ヶ月分或は3ヶ月分を保証金として約定の当日家主へ差入るるを定まりとす。神田区において畳建具付の貸家は裏長屋などには大抵なく、借主において畳建具を買い入るることなるが、此節は造作売という事流行し、以前住える人他へ転宅するに付きこの畳建具を新借主に売渡すにて、新借主とても畳建具を買入れざれば住われぬ道理なるが、この造作なるもの実に馬鹿気たる高値にて、6畳一間の長屋にて、畳6枚に障子6本、襖2枚に格子戸2本もあれば30円より35円位の相場なり。道具屋にて少し高値に買いたりとて、12-3円も出せば中古の品を買い得れど家賃が廉き故永い中には埋め合せが付くという理由をつけて泣く泣く高値の品を買い取りて住居するわけなるが、貧書生などにはかかる馬鹿気たる金は無く、少しは家賃高くても畳建具造作付の家を借り受けて共同生活を為すという有様なり。

管理人コメント

1903年当時の相場が実際の金額で書いてあり、当時の貸家の風俗の記述がとても貴重です。 それにもまして面白いのが、「畳建具付の貸家は裏長屋などには大抵なく」「少しは家賃高くても畳建具造作付の家を借り受け」という慣習の記述と、 「此節は造作売という事流行し、以前住える人他へ転宅するに付きこの畳建具を新借主に売渡す」 という記述。記述からは売主が前住人か大家か、はたまた家主かはっきりしませんが、なんとなく立場的には大家なんじゃないかな、という気がします。  ※ この場合、大家=管理人、家主=家屋所有者です。管理人のことを「差配」と言ったりもします。 さらに、畳建具の中古品が流通していること、畳建具のあるなしで家賃がおよそ1円かわるのも面白いポイントです。造作売りですとおおよそ3年住めば差が埋まる勘定になりますが、中古品を買うと1年で差が埋まる。そりゃ中古品を買うべし! となるのは当然ですが、流行しているゆえに造作売りでない物件を探すのが難しいのでしょう。それで「少しは家賃高くても畳建具造作付の家を借り受けて共同生活」となるようです。 江戸から明治の借家(裏長屋)風俗は落語のかかせない舞台背景です。上方落語「らくだ」「粗忽長屋」など「賃料を払わない店子」に「渋ちんの大家」がよくでてきます(笑)。またボチボチこのあたりも調べます(ひそかに落語好き)。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://www.o-yasan.jp/mt/mt-tb.cgi/726

コメントする

管理人

ヨメに来たら賃貸住宅のお世話がくっついてきた! 大家の立場で賃貸裏話を発信中!

Photo

  • 2011 04 30_0016.JPG
  • xy3qi.jpg
  • 80tqm.jpg
  • 67806296.jpg
  • ua1wv.jpg
  • driwf.jpg
  • 2010 10 10_9697.jpg
  • _S8O0642.jpg
  • 2010 10 10_9694.jpg
  • _S8O0096.jpg

このブログ記事について

このページは、が2008年7月31日 22:07に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「1901年  家屋借用証書・敷金預り証・借地証書」です。

次のブログ記事は「騒音問題のための一般的な対策」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。