のたれ死にした元入居者

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そもそも、滞納気味の人ではあったのです。
2-3カ月遅れては、ぼちぼちと追いつき、を繰り返していました。

そして、ついに解約届がO家さんの元に届きました。

「うん。どうもやっぱり払っていけそうにないからね。これ以上迷惑かける前に、と思ってさ」

悲しげな笑顔を浮かべて、退去立会に出てきた佐藤さんはそう言いました

「連絡先はここね。滞納分と修理代、敷金では足らんやろ」

壁には大きな穴がありました。共益費や水道代を入れても月3万円の賃料を滞納する生活です。
やりばのない腹だたしさを壁にぶつけたこともあったでしょう。
今は穏やかに退去の応対をしておられるだけに、O家さんは胸のつまる思いを飲みこみ、

「はい。修理代は敷金から清算して、足りない分の請求を出させていただきます。見積が出たら、まず見積書を送りますんで」

と、言いました。
そこでふと、示された連絡先をみると、姓が違います。

「……失礼ですが、どういったご関係で」

O家さんは見積もり確認の電話をするつもりです。関係を聞いておかないと、そのとき失礼があってはなりません。

「別れた女房の家」

さびしそうに佐藤さんは言いました。
それで一人暮らしをしていたのです。

「恥をしのんで居候。今、住み込みの仕事探してるんだけどね」

「わかりました。では、書類はそちらへご郵送、ということで」

大変な中を出てきていただいてありがとうございました、とO家さんが言いますと、佐藤さんは、

「いや、ひまなんだよ。困ったことに」

そのはかなげな言い方が気にはなったのですが、O家さんになにができるわけでもありません。
足が出た分は棒引きに、という気持ちがないわけでもありませんが、今ここでそう言うのは、他の入居者の手前、憚られます。
互いに丁重な挨拶をして、別れました。


約3ヶ月後。

見積書を出した時には、佐藤さんの方から、すぐに電話がかかってきました。
あの見積りでいいので、請求書を送って下さい、とのことでした。
その後、音信がなくなり、気になって、電話をしてみますと……


「もう亡くなりましたので」

元奥さんの冷やかな声が、電話口でしました。

「私も迷惑してるんですよ。本人とはとぅに別れて寄り付きやしないのに、いろんな書類が届いて。しまいにこないだは警察から電話がありましてね」


道路端で凍死しているのが、もとのご主人のようなので、身元確認にきてほしい、という電話だったそうです。

佐藤さんは、やはり元奥さんの家に居候、というのは憚ったのか、ホームレス生活をしていたようです。

「野垂れ死にされたんですよ。最後まで手のかかるったら。だから、今更請求されてもねぇ」

その言い方にむっとして、請求をしてやろうかと思ったO家さんですが、この奥さんは保証人さんですらありません。

「そうですね。一応形としては相続人の方にお渡しください、ということになるのですが………。形だけそういうことにしておいて下さい」


O家さんはそっと心の中で手を合せました。

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このページは、が2007年10月20日 21:44に書いたブログ記事です。

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