中世住居史 封建住居の成立

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昨日に続いて読書録です。
忘年会のあとに衝動買いした中の一冊。一気読みしちゃいました。です。


中世住居史



住居史の本はこれまでにも何冊か読んでいるのですが、ほとんどが建築様式の歴史なんですよね。
建築様式は現存する建物の制約上、古い時代は寺社建築等ばっかりだし、庶民の住居の歴史についての本というのはあんまりないんです。「住まいの人類学—日本庶民住居再考」ぐらいしか読んだことない。
民家研究は近いジャンルですが、ワタシの求めているものとは微妙にずれるんですな。




この「中世住居史」、サブタイトルに「封建住居の成立」とありますが、「封建時代」というのは身分社会でもあります。
著者の視点をユニークに感じるのは、その身分階層が建築様式に及ぼす影響を考察しているところです。
中世においては当然、身分階層=経済階層でもあるわけですが、支配階級と被支配階級の住居は建築様式以前の技術系統が異なる、という話から始まります。
ところが近世住居においては、支配階級と被支配階級の住居を建設する技術系統は、被支配階級のそれに変わります。
さらに建築モジュールを、柱の中心間距離を基準(真々柱間制)としていたのが、柱間の内法距離を基準(内法柱間制)とするように変わってゆきます。
このような建築様式の変化を、身分階層の変化から説明した本、というところでしょうか。



現在のような営利目的の「借家」の誕生は、著者によると中世も終わりに近い頃。
それまでも他人の所有する家屋に住居する例はもちろんたくさんあるわけですが、家屋所有者と入居者との関係は強い身分関係によるものとのこと。つまり主人が下人・被官・別家(部屋住み)を住まわせていた、という構図です。
それが「座」や「職」制の崩壊とともに主人の経済状態が悪化。今まで隷属家族であった別家・下人層の地位が向上し、経済的関係を所有者と結び、売買や質入などによって、近世的な意味での借家になってゆく、といった感じのようです。





その頃——近世初期の借家料が記載されてるのも面白いです。

天正2年(1574)の奈良のある借家料が4斗。月額なのか年額なのか、また広さもわかりませんが、米納のようです。


で、正徳3年(1713)大坂上本町。裏長屋一人一日銭2文。
朝出かけたら晩帰ってくるかわからないんで、家主が路地口でがんばり、皆の出かけしなに徴収するとか
銭納に変わってます。で、賃料の算出基準は筵わり、といって筵の広さを基準に算出するんだそうですよ。





それで思い出したのが、ウチの古い(大正ごろ)借地契約書。
ウチの地域はもともと農村だったのが、大正時代に宅地化がすすんだようなのです。
商工業が盛んになって、従業員を住まわせるとか(社宅ですね)、そんな理由でぞくぞく農地が宅地になり、ウチの田畑を借りて借家を建てたい。そんな話が多かったみたいです。
契約書を読むと
「懇望にまかせてウチの費用で宅地化にしたんだから、立退き料とか請求すんなよ!」

という内容がでてきます(笑)。時代が時代ですから、もちろん貸主からも解約できます。
そして面白いのが賃料の決め方。銭納ですが、算出基準は「毎年何月の米何石の値段」。
米本位制ですかーー(⌒◇⌒;)
どおりで、ムラのおばあちゃん'sが借地料のことを「年貢」と言うわけです。




奥付を見てびっくり。
初版1958年。うわ。
それでこういう視点か、と妙に納得したり、50年間類する本がなんでないんや!とか腹ただしかったり。








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コメント(4)

しぎのさんのお家は、大正時代からの大家さんなのですね。東京は流動が多いので、このような積み重ねを感じさせるお話には、感心してしまいます。確かに、賃貸の過去50年を振り返る本は少ないようで、礼金の発生にも説はあれども、確証を示しているものを見たことがありません。しぎのさんの所では、米納の賃貸記録があるのですね。近江辺りなのでしょうか。興味深い記録ですね。江戸期の資料では、玄米・白米で価値が違うようですが、白米が前提なのでしょうか?

はい。いわゆる寄生地主ってやつです(苦笑)。賃貸の歴史を振り返る本、ないんですよ。物価一覧に家賃は載ってても、敷礼は載ってないですし。貸宅地料は規定が「何斗」とか「何石」とかの記録があります。米納? と思ってびっくりしましたが、小作料はともかく、貸宅地料は銭納みたいです。でも、基準は米価。米本位制です。びっくりがとまりませんでした。玄米白米……どっちでしょう。時間のあるときにちょっと資料ひっくりかえしてみます。

立派な、地付きの大家さんなのですね。だから、ノウハウが蓄積されているのですね。>田畑を借りて借家を建てたい需要に応じて供給が増えるのが健全ですね。昨今のプチ家主さんの悲劇のように需要を見込んで建てた挙句の読み違いですは、何ともいけません。敷金は、個別の事情が多いので判り難いでしょうね。もともと、契約自体が契約者間の守秘情報ですから、資料があってもネタにし難いのかもしれません。

ノウハウ……蓄積されてるんでしょーか。かなりいきあたりばったりな気もしますが。需要の当て違いはわれわれ片田舎の地主にこそ多いですよーー。市街化区域だー! 相続税で土地なくなるわー! で悲鳴をあげて、アパマン建ててますから。需要のチェックよりそっちが優先順位的に先やから……(苦笑)。それで今、苦労してます……。>契約自体が契約者間の守秘情報ですから、資料があってもネタにし難いのかもしれません。そうでしょうねぇ……。大概好き勝手に書き散らしてる私でも、よう公開できませんもの。でも今みたいに問題になってる時は、一度振り返ってみるのもいいと思うんですけどね……。しいて言えば日本法令とかが出してる雛形類が参考になるでしょうか。でもこれはこれで著作権にひっかかるし……。外資社員さんのコメントにいろいろと考え事のヒントを頂いたので、またそのうちエントリ書きますm(^^)m

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このページは、が2006年12月14日 22:34に書いたブログ記事です。

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