敷金問題〜サイレント・マジョリティ

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昨日の記事にトラックバックをいただいたのに触発されて、再度敷金がらみの雑感。

本日は「家主側から見た」敷金問題の歴史を振り返りつつ。
いわずもがなですが、あくまでローカルな観点です。
んでもって、長いです。

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うちの地域はガイドラインと慣習が異なる。
ガイドライン以前はほとんどトラブルはなかった。
敷金を「改装費」に当てていたのだ。理非はともかく、家主も借主も、そういうものだと思っていた。
かつては部屋が空くたびに、ピカピカにするなんてことはなかったから、そうしても多くの場合は返金があった。
たまに「ピカピカに」という要望はあったが、それはあくまで借主さんの要望に応えるのだから、借主さんの負担で、というのがスタートであったようだ。そのような借主さんには入居時に貸主の費用で「ピカピカに」し、退去時に借主さんの費用で「ピカピカに」してもらう、という方式。
それが次第に、「ピカピカに」して貸してるんだから、「ピカピカに」して返してください、に変化していった。その説明でトラブルはあまりおこらなかった。
業者さんは敷金のもどりについては「あまり戻りません」「殆ど戻りません」という説明を口頭でする場合が多かったように聞いている。
それが証拠には、公営住宅においてもこの方式が採用されている。
少し話が先走るが、この方式が明文化されていた公営住宅においては、訴訟になっても貸主勝訴のケースが多い。(最近の控訴審等でくつがえされているケースもあるが、それはガイドライン以降、自治体より公社に「ガイドラインどおりにせよ」という行政指導があった後である)

ところが「ピカピカに」してがエスカレートしてくると、設備更新などの投資を嫌った一部の貸主がそれを敷金清算時に借主に転化するケースが出てきた。「ピカピカに」のひとことで。
当然借主は怒るわな。

あと、裏で慣習運用をしていた公庫融資住宅等の問題も大きかった。
これは法律上、借主から払ってもらえるお金が制限されている。
敷金の額の制限や貸主は更新料が取れない、礼金も取れない、など。
当然賃料はその分上がるはずなのだが、「相場に合わせる」という前提のために上がらなかった。
そこで貸主側は、裏で慣習どおりの運用をしようとしたのである。主に契約書とは別に念書を取るという方式であった。
それでも多くの借主は疑問を抱かなかった。「それが普通」だったからだ。
しかし、気づいた借主もいる。この念書は非合法である。非合法である以上、私的自治以前の問題。当然、貸主は負ける。争う余地はない。

このあたりから、「敷金問題」がはじまる。
「ピカピカに」して貸してるんだから、「ピカピカに」して返してくださいという慣習が、明文化されてない場合、また明文化されていても説明と納得が不十分な場合、貸主は敗訴するようになった。(明文化されてる公営住宅は勝訴)
明文化されていない場合に敗訴したのは、事業者たる貸主の落ち度であると同時に、「大家といえば親も同然、店子といえば子も同然」と言われた時代が過去のものになったことをあらわす。

特筆すべきは、「敷金問題」が騒がれだした当初、問題となっていたのは公庫融資や特優賃など、民法・旧借家法のほかにも法律的規制のあった物件が多くを占め、それ以外でのトラブルは少なかったことである。特に敷き引き方式では皆無といっていいほどであった。
そして紛争の殆どは「和解」による解決であることも記憶されるべきである。
(現在は敷き引き方式そのものをガイドラインや消費者契約法にてらして疑問視する傾向もある)

この騒動により「敷金は返らないもの」という「常識」は消えつつある。
ガイドラインも東京ルールも、その雰囲気の延長戦上にある。

しかし、ガイドラインに反する清算をし続けていた頃から、
そして今に至るも、慣習上の清算をしてもトラブルになるのは、少数派なのである。
少数派の声が、商習慣を変え、常識も変わりつつある。現在の方向は決して悪いことではない。説明が尽くされ、その上で合意して契約するのが本来のやり方だ。「言わずともわかる」は貸主側の甘えであろう。
しかし、統計に出てくるのはトラブルになった事例が殆どであり、その背後には清算方式に関わりなく、円満に終了した圧倒的多数の契約があることには気づいて欲しい。

契約には信頼関係と自己責任が必要である、という原点にかえることが必要と思う。
乱暴な言い方をすれば、信頼関係があれば清算方式だのガイドラインだのには関係なく、円満に契約は終了する。
お互い疑心暗鬼に捕らわれるのが最近の風潮だが、まず互いを信じた上で、わからない点、困る点を詰めていく姿勢をとりたい。


家主側の不幸は、賃料下落と敷金問題が同時期に起きたことだ。
賃料値上げができれば、ガイドライン方式どおり、きっぱり「改装」費用を賃料に乗せることができたのだが。
賃料が上げられないから、ガイドライン方式になかなか踏み切れない人も多いはず。

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このページは、が2004年10月 1日 22:37に書いたブログ記事です。

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