私のアパート建設顛末記

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(投稿byサンジ様)


本業が不振でした。脱サラ独立をしてみたものの、初めから低空飛行。でも、どうにかこうにか飛べていたのが、今回は墜落寸前。
それでも、妻とは、
「この宝クジが当たれば、問題は一挙解決だよ」
「そうねえ、1億は子供2人に残すわ。私って、何て殊勝な母親なの。1億は私たちの老後への貯金。うーん、あと1億何に使おうかしら」
などと、希望を失わずに生活しておりました。
しかし、宝クジは当たらず、かといって、銀行強盗というわけにもいかず。子供の林間学校代30,000円が必要となり、それを何とか捻出して持たせた時は、さすがに、
「僕たちって、こんなに貧乏だったんだ」
と、暗い気持ちになりました。妻からは、
「僕たちではなく、貧乏なのは、あなたでしょ」
と、冷めた声で、訂正を求められましたが。

結局、実家の父から、
「300坪の土地が空いたから、お前、そこにアパートでも建てろ、但し、金は出さんぞ」
と、制限付きの救いの船。 
今は更地で、業者が計画書を携えてやって来ているとのこと。この歳で親の世話になるのは情けなかったのですが、背に腹は変えられません。
その土地は、ある都市圏の近郊、駅から約2.5kmの第1種低層住宅専用地域にあります。2つの業者の計画書なるものを、早速覗いてみました。
業者  A社
建築物  軽量鉄骨造、2階建、3棟
(2DK×4、2LDK×4、3LDK×2)総費用  1億300万円
借上家賃  666,000円
業者   B社
建築物  木造、2階建、1棟
(1K×20)
総費用  1億1,200万円
借上家賃  883,000円
B社の計画書の家賃欄には、共済会費、設備共済費、提携ローンの月返済額を引いた、月手取額というものが太字で記されていました。
それを見て、私は・・・
B社の月手取額を見て、私は、目の前が急に明るくなるのを感じました。
「41万円! 手取と書いてあるのだから、丸々入るってことだ」
妻の顔が浮かびました、
「そうか、これで、やっとブランド物を買ってやれるぞ。かりんとうでも、ドーナツでも、あられでも、100円コーナーのものではない、森永や亀田のものを。よし、アパート建てるぞ」
緩んだ頬をひきしめて、2社の計画書を子細に検討してみることにしました。(特別なことがない限り、ハウスメーカーと、提携している管理会社とを、まとめて1社と表します)
その結果、次のことが分かりました。

1、2社とも一括借上システム。
2、A社は10年契約で、借上家賃は2年毎に改訂。
駐車場代は別途、実数分支払われる。
3、B社は何年契約か不明。借上家賃は10年固定
で、10年経過後2年毎に改訂。
駐車場代は、借上家賃に含まれている。
4、A社は、4年経過後入居者が退室した場合、1ヶ  
月の家賃支払の免責あり。B社は不明。

先程は、年甲斐もなく、「41万円」に心を動かされ、 すぐに飛びつこうとしてしまいました。しかし、計画書を読んでいくうちに、B社の会社としての信頼性はどうなのか、さらに、他社の場合はどんな提案をしてくるのだろうか、俄然興味が募ってまいりました。
実家のあたりでは、地元のJA(農協)と提携していることもあって、A社のアパートばかりが目に入ります。私は反骨精神が旺盛なほうなので(妻は、単なるヘソ曲がり、というユニークな見方をしますが)、進んでA社を選ぼうという気には、なれませんでした。
さて、活動開始です。先ず、B社の営業マンに来てもらうことにしました。次に、ハウスメーカー3社を新たに選び、各社に、建設地測量の上、事業計画案を提出してくれるよう依頼しました(2社は地盤調査も無料だったので、それも頼みました)。その際、各社に、一括借上システムを使うこと、収益性を第一とすること、の2点を条件として申し入れました。
3社とは、大手のC社、D社、そして地元のE社です。
収益性は言うまでもありませんが、一括借上システムにこだわったのは、やはり、日ごろ本業で、お客様の獲得、維持に苦労させられておりますので、これ以上そういった苦労は増やしたくない、という気持ちが強かったからです。
B社の営業マンが、私の仕事場にやってきました。早速、礼金や敷金の扱いについて尋ねると、
「実は、私どもの集合住宅は、アパートではないのです。ホテルとお考え下さって結構です。ご説明しますと、一般のアパートでは、入居者は大家さんと、賃貸借契約を結びますよね。ところが、当社の住宅の入居者は、ホテルの客室利用と同様の、利用契約を結ぶだけなのです。ですから、入居者から敷金、礼金は頂戴できないのです」
ホテル? そういえばパンフレットに家具・家電製品を標準装備とあったな。契約の話はピンときませんでしたが(賃貸借契約では借主がいかに保護されているかについて、実情を知りませんでした)、一括借上では、家主側は礼金を貰えない、敷金は預かれない、と理解していたので、敷金のことはちょっと気になるが、まあいいか、と思いました。
「でも、それって、何かメリットあるのですか」
「はい、不良入居者が退室してくれない場合、うちでは、即、入居者の荷物を外に運び出し、カギを付け替えてしまいます。面倒なことがありません」
なんだか荒っぽいやり方だなぁ、とは思いましたが、なかなか毅然としているではないか、と頼もしく思えたのも事実です。
「じゃ確認しますが、うちの場合、テレビや冷蔵庫もこちらで用意するホテルタイプで、問題のある入居者の追い出しはそちらで責任を持ってやって下さる。すべて計画書にある総費用に含まれている」
「おっしゃる通りです」
「それから、疑問に思っていたことなのですが、家賃欄のところの共済会費44,200円、設備共済費40,000円、これって何ですか?」
「大家さんには、共済会に入って頂きます。当社の大家さん同士の相互扶助組織です。ご指摘の費用は、その掛金で、これで建物や設備のメンテナンス、修繕、すべて賄えます」
修繕費を引いて「41万円」ということだったのか。これは益々結構。
「でも修繕費って、その掛金だけで本当に間に合うのですか」
「大丈夫です」
しかし、まてよ、10年経ったとして、こちらはどこも悪くなっていないとすると、掛金の一方的供給過剰。それでいて、こちらが必要となったときに速やかにお金が出ない、ということにでもなったら・・・
「共済会からここの大家さんにいくら出す、あそこの大家さんにいくら出す、というのは、一体誰が決めるのですか」
「ええっと、共済会は当社とは別の組織でありまして・・・
私もよくは知らないのですが、確か大家さんを代表する総代という方がおりまして、その方が中心となって決めるのではないかと・・・」
しばらくして営業マンは、これをご覧になれば当社のことがよくお分かりになれます、とビデオを1本置いて帰っていきました。
共済会については、やはり疑念が残りました。家でビデオを見ると、B社役員の紹介や挨拶があったのですが、ちょっと私の描いていた役員像とイメージの異なるところがあって、B社に対する関心は急速に弱まりました。
私には、ちょっとしたことですぐ気持ちが高まるかと思うと、これまた些細なことですぐに熱が冷めてしまうという、性格的に薄っぺらなところがあります。小雨のときにはしゅんとしていたのが、晴れるとパンパンに反っくり返る、外に落ちているボール紙です。妻は「お腹は厚いのにね」と言います。
B社は結局お断りすることになります。
さて、C社とE社の計画書も出来上がり、私は2社から説明を受けました。
ファミリータイプの計画を比較してみると、入居ターゲット像からして、明らかな方向性の違いがありました。
C社の報告書によると、「本物件周辺の賃貸住宅は2DK~3DKの専有面積40㎡~60㎡が殆どで、競合も激しいため、値下がりしている物件が見受けられる」
入居ターゲットは、「年収500~700万で勤め先から家賃補助があり、ゆとりを持ってマイライフを充実させようとしている新婚~ファミリー層」であり、「広さ、設備について差別化を図り、法人契約の需要に期待することが宜しい」
1戸当たりの専有面積は60~80㎡のものが提案されていて、担当の方によると、「うちでは、お子さんが大きくなられたご家族にも、結構入居して頂いております」
一方E社の担当は、ファミリータイプについて、
「アパートに入るのは、新婚から、上のお子さんが小学校に上がるぐらいまでの、せいぜい7、8年の短い期間なんですよ。広い部屋なんて必要ありません」
と、45㎡の2DKを提案する。
2社の提案の概要は、

業者  C社
建築物  軽量鉄骨造、2階建、3棟
(2LDK×4、2LDK×4、3LDK×2)
総費用  1億1,900万円
借上家賃  738,000円

業者  E社
建築物  軽量鉄骨造、2階建、2棟
(2DK×6×2)
総費用  9,650万円
借上家賃  705,600円

ところがE社の担当氏は、
「ワンルームも大丈夫ですよ。お嫌いでなければ」
と、もう一冊の計画書を開いて見せた。
建築物  軽量鉄骨造、2階建、1棟
(1K×22)
総費用  1億700万円
借上家賃  977,400円
私は、家賃の金額をさっと確認し、平静を装いながら(装えなかったかも)心の中で、
「B社のワンルームよりいい。しかも駐車場代別途。しかも総費用は安い。これは運が向いてきたぞ」
担当氏によると、 
「2DK1部屋の面積でワンルームは2部屋取れるんですよ。でも家賃はワンルーム2つのほうが、よっぽど取れますからね。ただ修繕費は戸数が多い分掛かりますよ」

そうか、収益性を考えればワンルームか。担当氏は、うちではどちらでも家賃保証しますから、と言って帰っていった。
さて、家での妻との会話。
「小学校のご父兄は、皆さん一戸建て?」
「そうね・・・知ってる人は皆一戸建てね」
「そうだ!クラス名簿があるだろう?住所を見よう」
「相変わらず遅れているわね。今は電話番号しか載せないの。個人情報保護よ。何を知りたいの」
今日の業者の話を伝えると、
「E社の方が、当たっていそう。この間行ったC社の見学会、確かあれ60㎡なかったわよね。でも、十分広かったわ。それに、ゆとりある暮らしのできる人が、駅から離れた80㎡のアパートに住むかしら。でも45㎡はちょっと狭いかもね」
「まっ、僕としては、収益性からワンルームしかない、と思っているけど。C社とD社にも聞いてみるよ」
「で、利回りはどれくらい?」
「えっ、よくそんな言葉知ってるね。たしか遠い昔君は文学部だったよね」
「ええ、誠実そうに見えただけの、なぜか1つ年上の同級生もいたわ。お陰様で親元では味わったことのない、たくさんのことを勉強させてもらえたわ」
では、これまでの各社の利回り(ここでは年間借上家賃÷総費用、B社も同条件に直してあります)を比較してみると、
A社  7.8%
B社  8.8%
C社  7.4%
E社2DK  8.8%
E社1K  11.0%
文句なく、E社のワンルームに軍配が上がります。
しかし、E社に対しては、他社にはない1つの不安がありました。
E社に対する1つの不安を述べる前に、事業計画の立案を依頼したもう1社、D社の提案について触れておきます。

建築物  ALC鉄骨造、2階建、1棟
(3DK×12)
総費用  1億3000万円
借上家賃  864,000円
利回り  8.0%
ここは系列の不動産会社が、駅から2.5kmは保証の範囲外という理由で家賃保証を拒否、次いである大手も同様の理由で拒否、結局C社のところと同じ管理会社の別支店が請け負うという経緯がありました。
その管理会社にしても、「ワンルームの家賃保証は勘弁して下さい」とのことでした。
さて、このD社の特徴として、外観にせよ構造にせよ、アパートにしてはマンションぽい(それらの定義はともかく)ということが言えるかもしれません。営業マンによると、
「うちの物件は賃貸市場ではマンションに分類されます」
パンフレットの宣伝文句も「築10年が、少しもマイナス条件にならない」、「10年後、20年後、その美しさの本当の価値が・・・」などと、長期耐久資産となることを強調しています。
確かに、仮に「築15年のアパート」、「築15年のマンション」という物件紹介があった場合、聞いて思い浮かべるイメージでは、「アパート」の方はちょっと分が悪そうです(両方を探す人は少ないかもしれませんが)。
ベンツがカローラより長持ちするように(実際には知りません)、一般に、高品質の物=長持ちですよね。D社がどれほど高品質かはさておき、高品質なら入居者を引きつける力も大きいとは言えましょう。
しかし、当然高品質=高価でもあるわけです。先のことより当面の収益性を第一とするこちらとしては、何といっても月手取額(借上家賃-月融資返済額)が決め手となります。すると、修繕費用のことを含め10年後以降のことは半分目をつむって、ここではワンルームのアパートを建てておくか、とならざるを得ません。
もっとも、E社の営業マンは、
「必要以上に長く持ったって無駄です。皆さん築年数を見るんですから。建て替えの時も頑丈なものは壊すのが大変ですよ」
壊すのが大変かどうかは知りませんが、一理はあると言えましょうか。
さて、E社に対する不安についてです。正確に言うと、E社とタイアップして家賃保証をする管理会社に対して、不安を感じるのです。
その管理会社の担当氏は、こう言いました。
「再募集時に1ヶ月の家賃免責があるなんて、家賃保証とは言えません。22戸あれば毎月どこか1戸は空室になります。すると毎月1戸分が免責になって、結局21戸の家賃保証になってしまいます。これは大きいですよ。
うちでは22戸完全に保証します。それに家賃保証の開始も、他では竣工後2ヶ月後からが多いですが、うちでは1ヶ月後から保証します」
なんと良心的な会社ではないか。
しかし、私の不安はむしろ増していたかもしれない。
大会社だからといって、無条件に信用することはできない。無論である。会社を守るためには、時には消費者も社員も切り捨てる。不正もする。しかし、小さな会社はそれらと無縁と言えるだろうか。
この担当氏は、
「大手はリスクを取りませんからね。私どもは大手と同じにやっていては商売になりません」
それでは、リスクが現実化したらどうか。会社の体力は大手とは比較にならない。
そこに不安の源があった。
「うちの立地ではワンルームどころか、ファミリータイプでも家賃保証しない会社もあります。なぜ大丈夫と言えるのですか」
担当氏は、
「大手の客付けは系列の1社だけです。実はうちは手土産を持って不動産屋さんを回る不動産屋なのです。自分のところでも客付けはしますが、そうですねぇ、今回は10社も回れば大丈夫でしょう。うちは手数料だって放棄してしまいますから・・・」
「客付け」という言葉も、「手数料」の意味もよくは知らなかったが、この会社は一応の戦略は持っているらしいと思えた。何だかゲリラ的な戦略であり、不安は依然として残るが。

結局、管理会社への不安は抱いたまま、E社のワンルームを建てることに決定致しました。ただ、弱気の虫が出て22室は20室に縮小してしまいました。
アパート建設は当然のことですが、建設会社に利益をもたらします。管理会社は今回、家賃の10%、礼金、更新料を受け取れます。融資した銀行には多額の金利が入ります。しかし、他にもいろいろとありそうです。私なりに経済波及効果(大げさですね)を検証してみます。
先ず、登記をするので司法書士に仕事が入ります。火災保険で保険会社、エアコンで家電量販店(メーカー)、消火器で防災会社が潤います。
がっぽり儲けるのは、国、地方公共団体です。市町村は水道加入負担金、固定資産税、都市計画税を手にします。県は不動産取得税、事業税を、国は大きいもので消費税(1%分は地方)、その他に、契約書で印紙税、登記で登録免許税、賃貸収入で所得税を手にします。そういえば、市県民税も賃貸収入で上がります。改めてお上の周到さには脱帽です。
「風が吹けば桶屋が」ではありませんが、借り手が入居すれば、先ず引越し便、お隣に引越しそばを配るので製麺所、引越した当日は疲れて外食となるので近所のファミレス(手伝ってくれた友人にご馳走する場合も、この辺はまだ分らないからと言ってここになります)、引越しのお知らせは一応葉書でということで郵便局も儲かります。
当然、照明、カーテンを始め若干の家電製品、家具、インテリア、更に電気、ガス、水道、家財保険と、それぞれの業界が儲かります。
勿論、我が家はこの賃貸収入で命をつなぐことができましたし、妻にブランド物のかりんとうを食べさせてやることもできました。また、土地の所有者である父親には固定資産税を減額してやれました。そしてアパートの入居者には、良質で安価な物件を獲得できて大いに得をして頂いた、と思っております。決して、家賃はもっと高くてもいけた、2部屋減らして損したなどと欲に駆られることはございま・・・・・。
不況の時代ですが、経済の活性化にほんのささやかながら貢献できたのでは、と思っております。
しかし、周りからは「10年経ったワンルームに競争力はない」という厳しい言葉も聞こえてきます。すべてはこれから、ということでしょうか。

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このページは、が2003年12月16日 23:36に書いたブログ記事です。

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