高齢者と賃貸住宅

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トメ:フクさん、フクさん。旦那が死んでから、うちがただっ広くなってね。引っ越そうと思うんだけれども、お宅の借家、空いてるかい?

フク:ああ、空いているよ。トメさんなら息子さんもよく知っているし、大歓迎だよ。

トメ:……なんだかひっかかる言い方だねぇ。私「なら」ってどういう意味だよ。

フク:トメさんは聡いから助かるよ(苦笑)。私ら、あまり年よりは歓迎しないの。

トメ:そらまたなんで? 若いのと違って騒いだりなんかしないよ。

フク:それはそうなんだけどね。確かに部屋は小さい子どもがいるのが一番痛む。

トメ:支払いも年金があるから大丈夫だよ。入院したってしばらくの貯えぐらいはあるよ。

フク:そういう意味じゃないんだよ。私らが怖いのは事故なの。

トメ:って、コンロの火を消し忘れたとか?

フク:他にもいろいろあるんだよ。階段でこけて骨を折ったとか、少ーしばかりボケてきて、部屋中にいろんなものをためこんだりとか。一番困るのはいわゆる孤独死だね。だから今回のトメさんみたいに、息子さんと面識があるとこちらは安心するんだ。

トメ:部屋の中で死んでると困るってことかい?

フク:そう。あと、身寄りがないと、入院先で死んでもなかなかこちらまで連絡がこなかったりとかね。

トメ:畳の上で死ねるんじゃ、結構なことじゃないか。

フク:でもその後、部屋が埋まらないんだよ。私だってサ、何人も畳の上で大往生した家は、それだけ長く続いてるってことだから、めでたいことだと思うんだけどねえ。

トメ:法事だって50回忌じゃ赤飯に赤いローソクだもんね。

フク:でも嫌がる人も多いんだよ。孤独死だって、確かに見取ってもらう人間がいなかったことは気の毒だけどさ、単なる病死なら「事故・事件」じゃないだろう。それが最近新聞なんかで騒いでかきたてるだろう。すっかり事故物件になってしまうんだよ。

トメ:ふふふ、フクさん、病死でも医師が死亡診断できなけりゃ、一旦変死扱いになって、死体検案書書いてもらわなきゃならんだろ?

フク:……余計なこと言わないどくれよ。そう限ったことでもないんだから。

トメ:でもね、フクさん。これからは高齢化社会だ。そうやって年寄りを締め出してたら、商売にならんだろう。ほら最近はバリアフリーだとかユニバーサルデザインだとかの物件も出てるじゃないか。

フク:そうだね。

トメ:昔と違って、電化キッチンも良くなったし。ほら、オール電化とかいうのも盛んに宣伝してるだろ。フクさんもいっそ、そういう年寄り向けのを考えて見たらどうだい?

フク:……確かに私らみたいな地主相手に、グループホームやケアハウスの話を持ってくる人も結構いるよ。サブリースで施設が借り上げて運営するんだとさ。

トメ:じゃあなんでしないんだい?

フク:うちが持ってるのは、このボロアパート一棟なんだよ。でも建てかえるにはまだ早いんだ。

トメ:あんまりそういうことを言っていると、建物の寿命が来る前にお客が来なくなるんでないかぃ。

フク:……無い袖はふれないんだよ。

トメ:じゃあ、相続税は大丈夫なんだ。

フク:うるさいね、私だって年寄りなんだ。あまり難しいことを言わないでおくれ。そうだね、じゃあ思いっきり年寄り向けのリフォームをして、管理人も雇って、大々的にやろうじゃないか。そのかわり家賃はどーっと上がるよ。

トメ:それは私が入れないから困るな。

フク:そうだろ? とりあえずそういうことにしておくれよ。うちは身寄りがいれば別に年寄りお断りじゃないんだからさ。

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このページは、が2003年11月 1日 00:27に書いたブログ記事です。

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