夜逃げ屋本舗を見習って

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マンション経営をしていて避けて通れない事件のひとつに「夜逃げ」があります。今回はO家さんの経験した夜逃げのお話です。

 O家さんは夜逃げされた経験が複数回あります。ですから、管理会社からの清算書を毎月つぶさに眺め、滞納月数が増えつつある人に対しては、督促と同時に夜逃げを警戒させます。
 そのようなお部屋では、集金や督促に行くと、郵便受けには消費者金融の督促状や勧誘DMがいっぱい入っています。……それこそのぞきこまなくてもわかるぐらいに。
 当然連帯保証人にも家賃の代払い交渉を始めます。そうして夜逃げにいたるまでに合意解約をしたり、生活保護の手続きを勧めたりします。

さて、管理会社のF本さんから電話がかかってきたのは、ある春の日のことでした。
「O家さん、申し訳ありません! 夜逃げです!」
「えっ?!  ルミエールの○△さん? それともマルシェの凸凹さんか?」
滞納常習者の名前が頭をよぎります。
「いえ、白樺ハイツ206号室の更科さんです」
不思議です。更科さんには滞納がありませんでした。いえ、正確には期日には遅れるのですが、管理会社のオーナー送金までには必ず払い込んでいるのです。そして今月は確かにオーナー送金にも間に合いませんでした。
「現場の確認はしたんでしょ? 僕も明日見に行くから、案内頼むよ」
F本さんにそう頼んでO家さんは電話を切りました。

翌日。
O家さんとF本さんは合鍵を持って、白樺ハイツを訪れました。
206号室の呼び鈴を押します。帰っていてくれ、と願いながら。
……、……、
チャイムの音だけがむなしくこだまします。
F本さんはドン、ドンとドアをたたいて「更科さーん!」と呼びます。
返事はありません。
職場には事務所を出る前に電話しましたが、3年前に退職しているとの答えで、現在更科さんが勤めているところはわかりません。
「メーターは?」
O家さんの声でF本さんは水道メーターを見ました。
「前の検針から動いてません」
この物件では水道検針は2ヶ月に一回。検針日から逆算すると、少なくとも1ヵ月半は動いていないことになります。
電気のメーターを見ると、配線が切られています。電気料金を滞納したたため、電力会社に切られてしまったようです。末期的です。
「気がつかなかった?」
「申し訳ありません。支払いが遅れながらもきちんとあったので、チェックしてませんでした。気がついたのは1週間前です」
F本さんは謝りましたが、O家さんもノーチェックだったのは同様です。
ワンルームに一人暮らしのの更科さんは、固定電話を置いていませんでした。携帯電話には幾度となくF本さんがかけていますが、いつも「運転中のためおかけ直しください」とアナウンスされます
「更科さーん、入りますよー!」
F本さんがひときわ大きな声をかけて鍵を開けました。

ほこりをかぶった部屋、たんすにはそのままの衣類。それでも荒らされた、という雰囲気はありません。流しには食器が少し置いてあり、ゴミ箱にはインスタント食品が山を築いています。生活していたそのままの部屋。貴重品だけがありません。

「連絡がつかなくなってどれくらい?」
とO家さんはF本さんに聞きました。
「家賃の支払い期日を過ぎたら、電話督促します。もっともいつも運転中のアナウンスですが、更級さんは運送屋勤務でしたし、支払いはいつもあったので気にとめませんでした。オーナー送金日をすぎても入金も連絡もないので、集金に数回来ましたが、いつも不在です。手紙は入れて帰りましたが、まったく連絡がありません。それで職場と連帯保証人に電話しましたが、退職されてますし、保証人さんもここ数年は没交渉だそうです。」
また、F本さんは、1週間前に最後の手段としてカギブロックをしたこと、それでも一切連絡がないことを付け加えました。
カギブロックとは鍵穴を外から覆って、カギを使えなくする器具です。これをすると入居者は部屋に入れません。違法スレスレの行為ですが、どうしても連絡の取れない入居者と連絡を取る最後の手段として使われます。当然、その前に予告の手紙を数回入れますし、カギブロックをした後は「連絡があれば至急取りに行くので、連絡を」と手紙、張り紙双方します。
すなわち、不在になって最低1週間、家賃の入金が前回あったのが3ヶ月前でその後本人とのコンタクトはまったく取れていません。そして、滞納家賃は2ヶ月、いや数日のうちに期日が来て3ヶ月となります。
「カギブロックしたまま、もう1ヶ月待とう。僕も十中八九夜逃げと思うけれど、期間からいえばまだそう判断して処理できないでしょ」
長期の旅行の可能性がないわけではありません。本人が見つかれば問題ないのですが、このままだと頭が痛くなります。
「その間に、連帯保証人さんと交渉して」
とO家さんは指示しました。
いくら夜逃げでも、中の荷物を勝手には処分できません。あくまで賃借人である更科さんのものです。そこで連帯保証人はたいてい本人と懇意の人が多いので、その人に保管や処理をお願いするわけです。

ところが保証人さんには応じてもらえませんでした。更科さんの保証人は友人の方でしたが、通帳と給与明細を見せて「お金がありません」
滞納家賃も「お金がありません。必ず本人を探し出してオトシマエつけさせます」
とてもアテにならないお言葉です。


また、O家さんにしてみれば、本人と連絡が取れないと契約解除ができません。契約書に解除条項はありますが、そのまま処理すると後から本人が出てきてゴネると難儀なことになります。
そこで仕方なく法的手続きを踏んで解除するのです。


更科さんからは1ヶ月たっても連絡はありません。携帯電話のアナウンスも「お客様のご都合により利用できません」に変りました。滞納のため、利用を止められたのです。

むなしく滞納分督促と契約解除の内容証明をいないことがわかっている住所に数回出し、弁護士にバトンタッチして明け渡し裁判と動産差し押さえをします。それで初めてO家さんは部屋の荷物を処分できるのです。
弁護士費用・裁判費用……とかく夜逃げは処理に手間とお金がかかります。
「某TVドラマみたいに、張り紙しておいてくれたら助かるのに」
とぼやきながら処理をすすめるO家さんです。

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このブログ記事について

このページは、が2003年11月 1日 00:14に書いたブログ記事です。

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